森澤のしっぽ

ノッキン・オン・ヘブンズ・ドアの森澤のしっぽのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

「天国じゃみんな海の話をするんだ」
 徳を積んで、善行を重ねて、欲望を抑圧して最後にたどり着いた天国なのに海がないんだって。天国ってあんまり、いいところじゃないですね(個人の感想です)。
 それはさておき、映画は同じ病院に入院していたおっさん2人が余命宣告されるところから始まります。この2人が車をかっぱらって海を見に行くというお話。
 銀行強盗をしたり、マフィアに追いかけられたり、かーちゃんに車を買ってあげたり、ホテルで複数の女性を抱いたり、少年みたいな2人が道中でそれぞれやりたいことをやって、トラブルに飛び込んで笑いながら海に向かう。でもそこにはちゃんと2人に死の影が迫ってくる。2人は死に怯えないし、受け入れもしない。こんなさわやかな”命”の描き方はほかでみたことがありません。
 そしてたどり着いた先の海がまた、キレイじゃないんだ。
南国のコバルトブルーの海でもないし、日本海の荒々しい海でもない。
普通の海。
湘南でいったら七里ヶ浜、由比ガ浜じゃなくて辻堂あたり(辻堂の人ごめんなさい)。
泳ぎたくもならないし、楽しいことも思い出さない、普通の海なの。
でもこのきったねぇ海が泣けるんだ。
最後、ともに旅をしてきた相棒が倒れてくたばりそうなとき、介抱もせず、となりに座り込んで海を見るんですよ。
もうね、その優しさに胸が締め付けられる。