幌舞さば緒

ノッキン・オン・ヘブンズ・ドアの幌舞さば緒のネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

台詞メモ

「浜辺にて、海から吹く潮まじりの風を嗅ぐ。臓腑で完全なる自由を感じる。唇で去りし恋人のほろ苦き口づけを味わう」「海を見たことがない」「嘘だろ?一度もないのか?」「ああ、一度も」「天国の門を叩いてる俺たちが酒に浸ってる。つまり俺たちは怖いものなし。なのに〝海を見たことがない〟か」「一度もないんだ」「天国で流行ってることを知ってるか?今は海を話題にすることだ。壮大な美しさを語り合う。夕陽が海に溶け合う前に放つ血のように赤い光を語る。そして、海によっていかに太陽がその力を失うかを語る。残るは心の中の炎だけ。だがお前は会話には加われない。見たことないからだ。ドジなのけ者になるしかねえ」「どうすればいい?」

ベンツ230 ベイビーブルー

「海へ向かってる。見たことないんだからな」「行くのはやめようよ」「天国で寂しいぞ」「分かってる。行きたいんだけど何だか怖くて」「よく聞け。怖いことないさ」

「車から離れるなと言わなかったか?お前らがバカだから命令した。車から目を離すんじゃねえと。言ったよな?なぜ俺の言ったことができないんだ?言い訳は聞きたくない。ぶっ殺してやろうか?やろうと思えばできる。だが車が先決だ。最後のチャンスだぞ。車を取り戻し二人のバカを連れてこい。すぐにだ。分かったか?」

「トリニダード、フエゴ、ボラボラ、ハワイ」「発音できない場所がいい」〝見かけより近くに〟「…やっぱり海が見たい」

「本当に雲に座って海の話をするのかな」「絶対確かだ」

「いくつだ?」「8つ」「8つ?」「お前は?」「20」「先が短いって言われたんだろ?」「ああ」「叶える願いは一つにしよう」「どれにすればいいか迷うな」「お互いが番号を言って相手に選ばせよう」「どっちから?」「お前」「20個書いたんだよな?じゃ選ぶぞ。1番だ」「1番か。ビンゴ!ママへのキャデラック」「キャデラック?」「それもキャデラックのフリートウッドを。プレスリーが母親に贈った。プレスリーの大ファンなんだ。小さい頃、ママと一緒にテレビを見てた。そうしたら急に座り込んで泣き始めた。その時から同じ車をあげたいと思ってた。だが文無しだ」「素敵な願いだ。気に入った。番号を選んでくれ」「8個だろ?7にする…いや、俺も1番にするよ」「他のじゃダメか?」「こんなのがお前の望みか?」「お前のキャデラックは夢がある」「二人の女とやる」「寝るだ」「結局なるんだろ?」「勝手に作るな」「皆が使う言葉だぜ。寝るってのは目を閉じて寝返りを打つ。お前は〝やる〟だ」

「捕まえましたか?」「正義の味方か?」「支配人?TNT爆弾で吹き飛ばすと脅してる。処理班を呼ぶ」

「いわゆるヘルシンキ・シンドロームとは、人質が犯人の心情に傾くことを指す。生存したいと思う過程で現れる無意識の極端な変化だ。まずパニック状態に陥る。それが突然犯人の信用と友情を得ようとする。だが当然犯人の目的は変わらない」

「この人にも1万送ろう」「住所は?」「鶏の足通り」「ひでえ名前の通りだな」

「俺の金は?お前らのことはテレビで見て知ってる。病気のこともな。願い事でも?」「海へ行きたいんです」「見たことなくて…」「見たことないのか。じゃ行け。急がないと間に合わんぞ。天国では皆が話す。海のこと、夕陽のこと…あのバカでかい火の玉を眺めてるだけで素晴らしい。海と溶け合うんだ。ロウソクの光のように一つだけが残る。心の中にな」

「着いたな」「潮を感じるか?」「うん」「ルディ、話があるんだ」「分かってる。僕が言うよ。何も怖くないさ」
幌舞さば緒

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