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嵐が丘のtakのレビュー・感想・評価

嵐が丘(1992年製作の映画)
3.6
エミリー・ブロンテの原作は何度も読んだし、ケイト・ブッシュが歌ったWuthering Heightsは大好きな曲。ヒースクリフとキャシーをめぐるある種異常な愛憎劇に、一時期ハマってしまったことがある。愛し合うが故に憎み合う。幸福になれると思えないけれど愛さずにいられない。もはや執着とも呼べるようなドロドロした人間ドラマは、他では味わえない。

映画化作品はあれこれあるけれど、代表的なウィリアム・ワイラー監督による1939年版はどうも好きになれない。話半分で終わるし、強引なハッピーエンドに持っていったように思えて仕方なかった。吉田喜重監督による日本を舞台にした翻案は、ドロドロした人間関係と全体の雰囲気がかなり好き。

ピーター・コズミンスキー監督によるこの1992年版は、個人的にはとても好感。原作にある程度忠実。しかしあの内容をじっくり描くには上映時間が短すぎるのが残念。されどキャスティングと作り込まれたムードがとても好きなのだ。特にヒースクリフの荒々しさと冷酷さ、内なる一途さを表現するのには、無表情なレイフ・ファインズは適役だと思う。ジュリエット・ビノシュのキャシーも、激しい感情を溜め込んでる感じが表情ひとつで感じられた。キャスティングで納得させられたし、原作の冷たい空気感が伝わる映画化だった。

憎しみを糧にして生きるのは難しいし、苦しい。ヒースクリフはその憎しみの陰にキャシーへの変わらぬ愛情があったからこそ魅力的なキャラクターなのだと思う。

坂本龍一の音楽が素晴らしい。
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