ひろぽん

私の中のあなたのひろぽんのレビュー・感想・評価

私の中のあなた(2009年製作の映画)
4.6
サラとブライアンの娘として生まれたケイトは、2歳の時に急性前骨髄球性白血病を患ってしまう。治療には骨髄移植が必要なのだが両親もケイトの兄もHLAが適合しない。いつ現れるかわからない適合ドナーの出現を待つしかなかった両親が、医者から非公式に伝えられたケイトを救う方法は、受精卵の段階で遺伝子操作を行い、ケイトのドナーにするための子供を作るという事だった。そして、生まれたのがアナだったが、生まれると同時に過酷な犠牲を強いられてきたアナは11歳の時、これ以上の提供を拒み、弁護士を雇って訴訟を起こした。アナが下した決断の理由とその裏に隠される真実とは何なのかという物語。


姉・ケイトのドナーになるために生まれてきた妹のアナが、臓器提供を拒否して両親を訴えるというのが主軸のお話。


幼い頃から姉のために太い針を刺されながらも文句も言わず姉を慕う妹のアナ。
白血病で辛い闘病生活を続けながら自分の運命を受け入れ、誰よりも家族を愛する姉のケイト。
失読症だが絵が得意で自己主張もせずケイトに寄り添う優しさを持つが、性別が違うせいか遠くから家族を見守る兄のジェシー。
常に冷静沈着で温かく家族を見守る愛に溢れた父のブライアン。
ケイトが家族の中心と考え、周囲のことが見えなくなってしまい自分の気持ちを押し付けてしまいがちな母のサラ。


難病にかかってしまった娘がいるが、ケイトに多くの関心が向いているだけで他の家庭とは何ら変わらない5人家族である。

家族一人一人の視点で丁寧に心境が描かれているため、それぞれの登場人物に感情移入がしやすい。

そして、登場人物の誰1人として悪い人がおらず、全員の気持ちが分かるからとても辛く複雑な心境になる。母のサラが悪く映ってしまうかもしれないが、彼女もケイト愛が強いだけで、アナもジェシーのことも3人とも愛しているのだと思う。

薬の副作用で髪が抜け落ち周りからジロジロ見られるのが嫌だというケイトのために、躊躇なく坊主にする母親のサラの行動は胸にグッとくるものがあった。

子どもは1人ではなく3人いるのに、どうしても子どもの優先順位ができてしまい、両親が平等に愛情を注ぐことができないというのも子どもたちからすると辛いだろうな。

母親が過保護になり生きてて欲しいと願う気持ちと、患者が少しでもいいから病院外で過ごしたいと願う気持ちの両者の気持ちは痛いほど分かる。折り合いのつかない感情のすれ違いはあれど、本人の意志を尊重してあげるのが何よりの幸せなんじゃないかと思う。

その点、兄妹たちはケイトの想いを尊重してて素敵だし、彼らの行動力も愛するが故の行動なんだろうなと感動するものがあった。

ケイトに集中しすぎてて兄の失読症に気づくのが遅くなってしまったり、子どもたちの気持ちを考えられなくなってたりと、非常にリアルに描かれている。

病気に苦しみながらも、愛を知り、家族に愛されたケイトの人生は幸せだったんじゃないかと思う。

“私が皆の関心を奪ってしまった”というケイトの台詞は彼女の気持ちを考えると本当に泣ける。

やっぱり大切な人の死を受け入れるのは、現実的になかなか難しい。

顔や髪、唇の色だったりと細部にまで本当に死にかけているような患者のメイクをする作り込みが凄いなと感じた。

悲しく辛いお話だけど、家族愛に溢れるとても素敵な感動できる物語だから大好きな作品。海で楽しく家族水入らずでワイワイやってるシーンが本当に幸せそうだった。ケイトのドレス姿は美しかった。

考えさせられる難しい問題だと思う。
ひろぽん

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