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火の鳥 鳳凰編の教授のレビュー・感想・評価

火の鳥 鳳凰編(1986年製作の映画)
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壮大で、それなりに長さもある原作を、まさかの1時間でまとめるという荒技。
しかし映画という表現にはこの「省略」が思わぬ味わいを生み出すことがある。
本作はその「省略」のグルーヴ感がたまらない。

原作にある「因果」の物語を強調し、茜丸と我王の対比。しかしそれぞれの「罪と罰」の物語が中心に展開するも。
これまた原作由来の背景にある「世相」と「社会情勢」とそれによって「文明」による「支配」が着々と完成していく様によって悲劇性は高まっていく。

速魚への溺愛と不信からの殺害シーン。てんとう虫の羽、その一枚で巧みな「死」の描き方と、愛するものの喪失を表現している点が秀逸。
また権力への支配が確立していく世相の中で、創作者たる茜丸が懐柔され理想を捨てていくという悲劇性。

「火の鳥」によって狂わされていく人々、という原作エッセンスを少ないキャラクターに的確に集約させている演出が見事。
またそれをきちんとシーンとして見せていく、という意識の高さも素晴らしく。
ラストカットは「2001年宇宙の旅」オマージュも見えた。
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