とぽとぽ

愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像のとぽとぽのレビュー・感想・評価

3.5
楽観するものが何もない

移ろいやすく奇妙な美しさに心惹かれる。すべては朽ち果て滅びていく、それだけが唯一確かなこと。
鏡や反射越しのショット/カットの多さ。時に伸びたり、またある時は何人にも分身して見えたり。人間本来の醜さを映し出すように寄り過ぎなショット。思いもよらぬカメラ位置や撮影、時に陰影を強く打ち出すように印象に残る照明、編集など独特な世界観トーンとテンポが魅惑的で、例えば本作自体がアートであるよう。内世界に潜り込むように強迫観念的演出が冴え渡っていて、見ているとなんだかゾワゾワするような感覚に襲われる。心情風景そのままにアーティストの不安定さを映し出すように、不安定な撮り方や強いこだわりを感じる画作りには妙に色気があって、何処か浮世離れしたように夢見心地で、目眩のするように罪深く背徳的。心に住み憑くように、心の迷宮へと迷い込む…。
タイトルに偽りなし!スタイリッシュでスキャンダラスでパワフル。悲劇/悲観的ミューズと、優しくない世界に生まれそいつを愛してしまったがゆえの破滅的な絶対的孤独や葛藤は、束の間の蜜月期を過ぎて衝突へ。情熱的な愛蔵渦巻く刺激的で、傷つき傷つけられ今やアートとなっていく。退廃的なヨーロッパらしさも帯びて、デレク・ジャコビ、恋人ダニエル・クレイグ、ティルダ・スウィントンと見事なキャストの共演。ただ、登場キャラ同士がする会話や主人公フランシスのモノローグなどの小難しい話題は注意深く聞いて、自分の中で都度咀嚼して見ていないと、ただ右から左へと流れるだけで置いていかれそうにもなる。

P.S. OPからイケすぎ!ちなみに入浴シーン中、ダニエル・クレイグの股間にお風呂色のボカシ
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