しじみ

愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像のしじみのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

ベーコンの視点から、彼の亡くなった恋人との日々が描かれる。
著名な画家であるベーコンのアトリエに、ある日屋根から降ってきた間抜けな泥棒のジョージ。
ベーコンは泥棒に「寝室に来たら欲しいものをあげよう」といい、その日2人は恋人になった。
出会った当初、ジョージに愛情を示していたベーコンだったが、次第に彼を仲間の前で嘲笑ったり、浮気で家から締め出したりするようになる。
過去にまつわる悪夢に魘されるようになったジョージは、徐々に精神の均衡を失い、薬物中毒になってしまう。そんなジョージをただじっと観察し、彼の作品を描き続けるベーコン。(ジョージが手をしつこく洗うシーンがあるので強迫神経症も併発しているのかも。過去のトラウマと関係がありそう)
ジョージは何度も自殺を試みるが、ベーコンは彼にそんなに度胸はないと笑うのだった。
そんな折、ベーコンはグラン・パレで展覧会を開くためパリへ呼ばれる。友人はジョージには休養が必要でパリへは連れていかない方がいいと忠告するがベーコンは耳を貸さなかった。
グラン・パレのセレモ二ーに出席し、「現在生存する最も偉大な画家」と呼ばれ、褒め称えられるベーコン。その同時刻、ホテルの一室でジョージは薬物を大量に飲んで自殺する。

ベーコンからジョージの(そして私たちの)期待するような反応は得られないと分かっていて、縋ってしまう愛人の気持ちが痛々しくて見ていて辛い。
それでもベーコンは彼なりに愛人を愛していたんだと思う。でもそれは常人に耐えられるような愛ではないんだろうなー。
愛してることは大切にするとイコールではないのだろうね。
ベーコンはいつか人が朽ちることをよく分かっていた。ジョージの肉体や息遣いに興味をそそられる、それが全てなのかも。
ベーコンの美しくいようとしないところがいい。実際彼の愛は狂気じみてて恐ろしいけど変に取り繕わないし…。でもだからこそ救いはないよね。

気がつくと、食い入るように見ていた。
最後に薬を飲むシーンではなんだか気持ち悪くなって戻しそうになったわ…。
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