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書を捨てよ町へ出ようのtomひでのレビュー・感想・評価

書を捨てよ町へ出よう(1971年製作の映画)
4.0
5月4日は寺山修司の命日という事で、久しぶりに観直したが、2021年の今観ても独特の世界観に引き込まれる。

オープニングの「映画館の暗闇でそうやって待ってたって何も始まらないよ」と、この映画を観る観客へのアジテーションから、娼婦の部屋、サッカー部室、ウサギの妹のくだり、新宿ゲリラ撮影、性、貧困、家族、色んな事を巻き込みながら観客の深層意識に踏み込んでくる画面作りに惹かれてしまう。

映画の文法としても、起承転結こうあるべきという既製の映画にはない自由さに溢れている。虚構と現実、それを観客に意識させながら、制作そのものを遊んでいるというか…。71年公開、ATG低予算のチープさも勿論あるが、それ以上の魅力が詰まった寺山修司の監督デビュー作。

エンドロールの代わりに出演者とスタッフ全員の顔をパンして終わる映画(文字無し)なんて世界でもこの映画だけでは?(笑)

「コカコーラの瓶の中のトカゲ」

「ポランスキーも大島渚もアントニオーニも、電気が点けば消えてしまう世界なんだ」
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