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逃亡地帯のakrutmのレビュー・感想・評価

逃亡地帯(1966年製作の映画)
4.1
石油成金が牛耳るテキサスの田舎町を舞台に、疎まれている囚人の若者が脱獄して町に向かっているとの情報が広まり、町の一部の住民が狂気的な行動を起こすまでの姿を描いた、アーサー・ペン監督のドラマ映画。劇作家ホートン・フートの同名戯曲・小説が原作。

アーサー・ペン監督といえば、アメリカン・ニューシネマの代表作である『俺たちに明日はない』で有名であるが、その前年に公開された本作も、閉鎖的なムラ社会における濃密な人間関係とそこから集団ヒステリー的に発生する狂気、当時の世相を反映するようなカジュアル・セックスなど、アメリカン・ニューシネマ的なテーマを扱っている、アメリカン・ニューシネマ作品と言える。

この町の住民であった脱獄囚ババーがなぜこれほど嫌われているのかが描かれていないこともあって、集団的な狂気にいたる理由がいまひとつ理解できない面はあるが、それを差し引いても十分に魅せてくれる。ババーへの(ある意味では)蔑みや恐れだけではなく、石油成金であるヴァルや彼に優遇されている保安官のカルダーなどにも向けられる、妬みとも嫌悪とも言える複雑な感情など、複数の観点から閉鎖的なムラ社会のネガティブな側面が効果的に浮かび上がってくるし、そこに、どこかふざけたような性的に緩いセレブ女性たちが出てくるのだから、内容的に充実しすぎるくらい充実した秀作と言っていいだろう。なんとも言えない破滅的な結末もグッド。

豪華な出演者もみどころ。脱獄囚ババーを演じた若きロバート・レッドフォード、その妻を演じたジェーン・フォンダ、そして保安官役のマーロン・ブランド。特に、マーロン・ブランドが男たちからリンチを受けるシーンの迫力は素晴らしい。ジャニス・ルール演じる妻に大っぴらに浮気されながらも、どこか冷静なままの銀行副頭取のロバート・デュヴァルも印象的。もちろん、ジェーン・フォンダのグッとくる女っぷりも良い。
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