雨のなかの男

逃亡地帯の雨のなかの男のレビュー・感想・評価

逃亡地帯(1966年製作の映画)
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U-NEXTで。嫌な映画だったぜ。ある一晩での出来事をじっくりじりじりと描く。貧富の差や権力関係、不埒な夫婦仲、人種差別、酒池肉林の狂乱、理不尽な暴力…と、いわゆる正常な人が存在しない。そもそも正常なんてものは無いとでも言いたげに人々の業を描き出す。ちょっとしたひと押しで転がり落ちる火だるまのタイヤがこの物語の狂乱ぶりを象徴している。ただただまともに正義を行使しようとするマーロン・ブランドが不憫でならない。同じくアーサー・ペン監督の『俺たちに明日はない』では黒人の農民に拳銃を渡し、富の象徴たる銀行の看板を撃ち抜く場面があった。ボニーとクライドが犯罪者でもヒロイックに見えたのはこの弱者の視点に立ったところが大きい。ところが『逃亡地帯』には弱者に対する救済は何も無く、ひたすらに醜悪な人々の暴力を見せつけられる。実にハイカロリーな映画だったぜ。「酒は人の本性を暴く」とはよく言ったもので、この映画の飲酒シーンはその意味で割と重要だと思う。
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