ダイナ

激突!のダイナのネタバレレビュー・内容・結末

激突!(1971年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

再鑑賞。巨大なタンクローリーが放つ存在感は本作をモンスター映画と捉えたくなります。衝突危機以外のスリル、心理的な追い詰め方が面白く、危険から逃れる手段を模索しながら立ち向かうマンの姿が良いです。窮鼠猫を噛む系、どれだけ虐められようと会心の一撃が刺さればそれでいいんです。

物質的なプレッシャーもさることながら(電話ボックス衝突はミスの許されないガチンコ感にヒヤヒヤします)、内面的なプレッシャー、例えばダイナーや児童バスのシーンにおける「被害者なのに周囲からは狂人にしか見えず邪険に扱われる辛さ」が良いです。子供達を思って避難させようとして拒絶される、善意が伝わらず敵意を向けられるしんどさがマンの内面に負荷をかけていき良いですね。「自分が悪いことしたか?」必死に正当性を探し、どう切り抜けるかを考える店内が静のサスペンス、屋外と違った方向で緊張感を見せてくれます。

本作の特徴は最後までドライバーの顔が見えない所。言葉も話さない、表情も見えないそのブラックボックス感が恐怖を掻き立てられます。ヒッチコックの種明かしをすぐするなという言葉が制作中のスピルバーグによぎったそうです。最終的にドライバーの正体や動機は明かされませんでしたが、本作においては実体を確かにすることこそが野暮と思えてしまいます。登場人物のドラマ性はなるべく差し引いたことにより(妻とのやりとりによるマンの尻に敷かれた攻撃性の薄さくらいでしょうか)、アクションとサスペンススリラーに集中させるように特化した贅肉の無い構成が本作の魅力のように思えます。

静かなエンドロール、マンには申し訳ないけども心地の良い余韻でした。緊張感から解放された脱力、正当性あれど殺人に関与してしまったことへの後悔等感じられます。まあ自分だったらここまでされて後悔するよりかは、「どうやって帰るんだよ…」とか「警察説明めんどくせえ…」とか、無駄になった時間への儚さとか徒労感をずっしり噛み締めて苦い顔しちゃいますね。

あと何がとは言わないけどもトレマーズは激突!の影響を受けてる気がする。
ダイナ

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