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激突!のYYamadaのレビュー・感想・評価

激突!(1971年製作の映画)
4.0
【監督スティーブン・スピルバーグ】
第1回監督作品
◆ジャンル:  
 ホラーサスペンス
◆主な受賞歴
 第1回アボリアッツ国際ファンタスティック映画祭グランプリ

〈見処〉
①「あおり運転」の恐怖を描く、
 良質の「TVドラマ」
・『激突!』(原題: Duel)は、1971年製作による、人気作家リチャード・マシスンの短編小説を映像化した米国のテレビ映画。
・セールスマンのデイヴィッドは商談のためカリフォルニアへ向かう車中、荒野のハイウェイで大型トレーラー型タンクローリーを追い越したが、その後トレーラーは、執拗にデイヴィッドの車に「あおり運転」を仕掛けてくる。
・幾度となく振り切ったかと思えば、見せ突如姿を現し、列車が通過中の踏切にデイヴィッドの車を押し込もうとしたり、電話ボックスごと跳ね飛ばそうとするなど、次第に殺意をあらわにしていく。逃げ切ることが難しいと悟ったデイヴィッドは、レーラーとの決闘を決意することになる…
・本作は、米国にて放映するための74分のTVムービーとして製作されたが、非常に視聴者の評価が高かったため、1973年には90分の劇場用映画として、欧州や日本に配給された。劇場用では、主人公が運転するプリムス・ヴァリアントが、タンクローリーに押されて列車に跳ねられそうになる踏切のシーンや、2台がスクールバスを巡って対決するシーン等が追加撮影されている。
・本作以前に『刑事コロンボ』TVシリーズの監督を務めているスピルバーグであるが、(海外なれど)劇場公開された第一回監督作品として、広く認知されている、最高の処女作である。

②スピルバーグ25歳に見る演出の原点
・本作はTV放映日に向け、撮影期間が16日、編集作業から放送まで3週間程度の超ハードスケジュールが設定されていたため、絵コンテを用いず、大きな地図に撮影ポイントなどを書き込んだものを使って撮影が進められた。また、効率重視のため、複数場所にカメラを設置し、ワンアクションを多数アングル撮影することで尺を稼いでいる。早撮りスピルバーグにとっても、「最も慌しい映画作り」だったらしい。
・原作を基にした脚本にセリフが多いと感じたスピルバーグは、沈黙がイマジネーションを刺激する要素だと確信し、セリフの50%をカットを要求。製作のユニバーサルは猛反対するが、スピルバーグは断固として譲らず「自身初のサイレント映画」と断言するほどの自信作を完成させた。
・また、ラストシーンにおいても、トレーラー爆破に拘るユニバーサルに対し、巨大なモンスターが絶命するような描写とするために爆破を拒否。スピルバーグは監督を辞すことも含め猛抗議し、その主張が認められた。
・本作はトレーラーの運転手の顔を一度も観客に見せず、タンクローリーが意思を持っているように演出。処女作である本作にて、後の『ジョーズ』や『ジュラシックパーク』を彷彿とさせる才能を見せている。
・ハリウッドのレジェンド、スピルバーグが「自分がこの作品で何をやったかを忘れないために、今も年に最低2回は観ている」と言わしめる、スピルバーグ25歳の作品である。

③結び…本作の見処は?
○: ストーリー性はないが、モンスターに追跡されているような、一級のホラー作品。
○: カーチェイス・シーンのカメラワークは、映画の教科書的な存在。
○: ラストのトレーラー「絶命シーン」の咆哮は見逃せない。
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