ポルりん

あらいぐまラスカルのポルりんのレビュー・感想・評価

あらいぐまラスカル(1977年製作の映画)
1.8
「あらいぐまラスカル」の第12話を劇場公開した作品。


あらすじ

明日から待ちに待った夏休み。シカゴ大学へ行っている2番目の姉ジェシカも家へ戻ってきた。
スターリングは動物図鑑、ラスカルは1セント銅貨をおみやげにもらったのだが、早速ポーに取られてしまい大騒ぎになる。


上映時間は25分程だが、中身は特になく2番目の姉ジェシカがラスカスを尻で圧死させようとしたお詫びにラスカルに硬貨をプレゼントする。
その後、ラスカルが硬貨を自分の巣に持っていこうとした所、カラスに襲撃され硬貨を奪われるという話。
正直、ラスカルとカラスが戦っている所しか印象に残らなく、本当に何も残らない作品であった。

妻「なぜわたしはあんなムダな時間を・・・(ノД`)・゜・。」

と、三井寿ばりに後悔している妻を見て、私まで悲しくなってしまった。


前々から疑問に思っていたのだが、何故この手のブローアップ版は微妙で印象に残らない話を選択するのだろうか・・・。
どうせ上映のであれば視聴率が高かったり、評価が高い話を上映すればいいのに・・・。

そういえば、本作の主人公であるスターリングだが、「アライグマの実験」とか言ってラスカルを見せ物にしたり、自分のペットが銃殺されても不思議ではないくらい迷惑を掛けても、「動物嫌いの人がごちゃごちゃ騒いでいる」程度にしか思っておらず、クラスメイトを血が出るまでボコボコにしたりと決して性格が良い訳ではない。
にも関わらず、本作では何故かスターリングを優等生であるかのように演出をしている。
子供の頃に再放送を観た時は、スターリングは動物好きで心優しい優等生と思っていたのだが、30歳を過ぎて改めて鑑賞すると陰日向のある腹黒い少年にしか思えなくなってしまった。
今更ながら、普通に陰日向のある腹黒い性格にするのではなく、勉強とかは全然出来ず教師とかには刃向ったりするが、実は正義感が強く動物が好きなキャラクターにした方が良かったのではないだろうか・・・。

本作のED「おいでラスカル」も何気なく聞いたのだが、子供の頃は特に何も感じなかったのに、大人になって改めて聞くとかなりの違和感を覚える。
「おいでラスカル」の詩は以下の通りである。


「おいで きょうも ラスカル
ぼくのひざへ
おぼえているかい
かしのきの あなのなかで
きみはねむっていたね
きみはねむっていたね あかんぼのとき
つきよの ウェントワースのもりで 」


恐らくこれはスターリングがラスカルとの出会いを表現していると思うのだが、ラスカルを見つけた時間帯は夜ではなく真昼間だ。
普通に「つきよの ウェントワースのもりで」ではなく「真昼間の ウェントワースのもりで」でもいいと思うのだが、何故事実を捻じ曲げてこのような偽装工作をするのかが理解出来ない。
また、かきの木の穴の中で眠っていたかも第1話を観る限りでは全く確認出来ない。

因みに、この詩を見る限りではスターリングとラスカルの出逢いに温かみを感じるようになっているが事実は全く違う。
実際はスターリングがアライグマの巣を勝手に掘り起し、ラスカルとラスカルの親を無理矢理連れ去ろうとするという温かみなど微塵もなく、スターリングの冷酷さを露呈しただけの酷い出逢いである。
更に言うとこれがきっかけでラスカルの親が猟師に射殺される事になるので、間接的とは言えスターリングがラスカルの親を殺した事になる。
普通なら、

スターリング「僕のせいでアライグマ一家を離散させてしまった (´ω`。)グスン」

と後悔の一つでもするのだが、事スターリングにかけてそんな事は微塵もない。
災いの元凶であるにも関わらず、それを自覚した素振りが全くなく、事もあろうに全ての責任を猟師に擦り付けようとしている。
ラスカルの親が猟師に射殺された後、

スターリング「酷いじゃないか、おじさん!!\(#`Д´#)ノ」

と、発言しているが一体どの口が言っているんだよ!!
因みにだが、猟師がラスカルの親に銃口を向けた際に、

スターリング「止めてくれよ!生け捕りにしたいんだ!!」

と言う動物愛護精神とは程遠い信じられない発言などもする。
ストーリーを全体で見ても人間にとっては美談かもしれないが、アライグマからしたら人間の身勝手な理由で自分の住処を荒らされた挙句、母親を射殺され、拉致監禁された後洗脳し、最終的には邪魔になったからという理由で山に捨てるというかなり酷い話となる。

現在、日本はペットの殺傷処分が世界一位であり、年間猫が20万匹で犬が10万匹が殺傷処分されている。
恐らく飼っている途中で面倒くさくなって公園に捨てたり、沢山子供を作り過ぎたりなど色々な理由はあると思うが、いずれにしても身勝手な理由が多い。
更に言うと「あらいぐまラスカル」を鑑賞して、アライグマを飼う人が急増したが、飽きたのか面倒見きれなくなったのかは分からないが、アライグマを山に捨てる人が大勢いるらしい。
正直、これは非常に残念な事であり皆で真剣に考えなければなければならない社会問題だと思うし、「あらいぐまラスカル」などこういったペットを扱う物語はこれを考えさせられるようにしなくてはならないと思う。

一応、「あらいぐまラスカル」でもこういった事を考えさせられる内容になってなくもないが、如何せん人間とペットの友情を前面に出し過ぎており、パンチがかなり弱く、余りそういった事を感じない演出や内容になっている。
個人的には人間とペットの見せかけの友情を描くよりも、アライグマの凶暴性、ペットを飼う上の責任感、そして動物愛護法について考えさせられるように描くべきだと思うのだが・・・。
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