半兵衛

妻の半兵衛のレビュー・感想・評価

(1953年製作の映画)
3.9
もはや惰性で結婚生活をしているだけに過ぎないのに別れることさえも出来ない、倦怠期というにはあまりにも疲れはてた生活地獄。かつて松竹時代美男美女俳優として人気のあった上原謙と高峰三枝子に、どうしようもない感情を行き場もなくうろうろとしているダメ人間を演じさせるとは…。一見するとこれからの夫婦生活をどうしようかと悩んでいる上原に悲哀を感じるが、それ以上に普段はだらしないくせに、夫が不倫していると知ると不倫相手に怒りをぶつける高峰三枝子の破綻していると理解していても妻でいようとする健気さと女の意地が混ざりあった感情が哀れ。

答えが出ないまま終わるラストは成瀬監督らしいけど、下手な解決策を提示せず綻びた空気にいることの苦痛を観客に容赦なく見せつける成瀬監督の冷酷さに背筋が凍ると同時に痺れる。
半兵衛

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