真魚八重子

妻の真魚八重子のレビュー・感想・評価

(1953年製作の映画)
4.0
これは見逃している気がして、DVDを購入して鑑賞。やっぱり未見だった。

いつもの成瀬。結婚10年目で子どもがいないというのは、当時きっと色々言われる類の家庭になると思う。倦怠期でいつも気のない上原謙と、お金のことばかり考えている高峰三枝子の夫婦。フルムーンのCMとかあった気がしたけど、何か夫婦としてしっくりこない気がする。高峰さんが市井の主婦にしては豪奢な雰囲気があるから?

その高峰三枝子が歯に挟まったものを箸でほじって、お茶でクチャクチャ口をすすぐ。イワシ4本に梅干しの貧相な弁当には髪の毛が入ってしまっている。いくらなんでも、というゾワゾワする描写。
案の定、上原謙は職場で机を並べる未亡人のお弁当を見て、丁寧でおいしそうな腕前に惚れ惚れし、好感を持つ。彼女に美術展に誘われてデートをし、徐々に不倫の関係に発展していく。

上原謙も初の不倫で隠すのも下手だし、高峰さんに責められても黙り込むくらいしかできない。ただ、そんなウブな恋愛ゆえにたちが悪く、深入りしていく。

様々な映画で同じようなテーマを扱いながら、不倫が長くて気怠いパターンや、不倫が始まりそうで始まらない場合や、シリアスだったりコミカルだったり、色々作れるものだなと思う。本作はコミカルに始まるけれど、モヤモヤと引きずる気配で解決せず終わる。とりあえずいつも上原謙が悪い。
真魚八重子

真魚八重子