か

妻のかのレビュー・感想・評価

(1953年製作の映画)
3.8
これは、成瀬の中でもある意味異色だと感じた。女性映画を撮る監督として名を馳せ、主人公となる女性はだいたい誇り高く生きているパターンが多い。が、この『妻』の妻は、あまり誇らしく描かれていない。夫の上原謙も他の成瀬のクズ男映画に比べて、そこまでクズ感がない。ただ、仕事風景が重要で、テキパキ働いている姿はやはり見せない。なんとなくぼんやり昼飯を食っていたり、勤務中にブラついていたり、無気力にハンコを押していたりする。だけど、仕事を休むわけではないし、無能な社員という描写もない。

映画の主要な登場人物としては成立しづらい、「普通の人」をこの映画では描こうとしたのかもしれない。

浮気相手もまた絶妙に普通の顔をしているんだよね。

あと弁当のくだりがなかなか面白いです。いろんな飯が出てくるのも良い。三國連太郎がまたいい感じのぐだぐだ人間なのも良い。
か