Listener

音のない世界でのListenerのネタバレレビュー・内容・結末

音のない世界で(1992年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

ろう者をテーマにした映画ってどれも見ごたえがある。ろう者が上手く話せないのは音によるフィードバックが得られないからだろうなあ、と思いながら本作を観始めたので、ああいうテクノロジーを使った練習法が30年以上前にあったことに少し驚いた。今の技術だったらもっと有効な練習法があるんだろうか。

カメラに向かって手話でコミュニケーションをとる彼らの雄弁さよ(力強さとでも表現する方が適切か?)。自身が抱える障害ゆえに、幼い頃から現実と向き合わざるを得なかったのだと想像する。一番心を打たれたのは結婚式のシーン。たどたどしく手続きを済ませた二人には結婚行進曲のオルガンの音色は届かないが、出席者から祝福される様子を見て涙が出た。一方で、新居の内見のシーンで筆談しないのは噓臭さを感じた。

もし耳が聞こえなくなったら…と想像することがある。字幕付きの映画であれば多少は楽しめるかもしれないが今くらい映画を楽しむのは無理だろうと思っていた。それが映画を観ることが好きだったろう者が何人か居て、これまた意外だった。

冒頭の手話の合唱、発声のフィジカルなフィードバック、エレベーター内でのコミュニケーションとその後の暗転、美術館…語りたいシーンがまだまだいっぱいある。

最近観た映画のラインナップが『夜明けのすべて』『雨降って、ジ・エンド』『アダマン号に乗って』『音のない世界で』なのは本当に偶然だが、こういったテーマへの関心が段々高まってきた。
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