TaiRa

喜劇 男は愛嬌のTaiRaのレビュー・感想・評価

喜劇 男は愛嬌(1970年製作の映画)
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この映画の渥美清は何時にも増して狂気的で、完全にカオスの使者。故に悲哀を抱えてるってとこまで表現する渥美清の芝居の上手さ。

少年院帰りの俺っ娘、倍賞美津子を更生させたい幼馴染みの寺尾聰。そこに諸悪の根源であり、マグロ漁船乗ってアフリカ行ってた兄貴の渥美清が帰って来る。ご多分に漏れず自分勝手でデタラメな兄貴を渥美清が演っているが、今回は特にヒドい人間でもはや恐怖。もともと渥美清はどっか怖いが。常に口からでまかせで相手を言い包める勢いが凄い。ダンプカーで長屋を破壊したので、金を作る為に倍賞美津子を玉の輿に乗せようとする。弟から人身売買呼ばわりされるが実際にそう。地主の田中邦衛に嫁がせようとした時、無言で邦衛が走り出して皆でそれに続くロングショットが無駄にカッコよい。成金の宍戸錠とか見るからに如何わしい財津一郎とか、旦那候補に出て来る連中がみんな濃い。財津一郎がオモロイし普通にギャグとか言ってる。舞台美術に関しては、長屋に突っ込んだダンプカーがずっとそこにあるのが最高。ヘッドライトのギャグがイケてる。カオティックな表層と反して心の中じゃ寂しさを抱えてる渥美清の、それを指摘された時の芝居が良い。ラスト、出港した漁船の上から弟たちを眺める眼差しは、言うなれば地上の人間に羨望の眼差しを向ける天使のそれである。
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