一

喜劇 男は愛嬌の一のレビュー・感想・評価

喜劇 男は愛嬌(1970年製作の映画)
-
新宿芸能社シリーズの『喜劇 女生きてます』では橋本功が家内をスッチャカメッチャカに破壊し、『女生きてます 盛り場渡り鳥』では山崎努が大黒柱をガシガシ揺すって家自体をぶっ壊そうとしていたわけだが、それらに先立つ本作では貧乏長屋にダンプカーが突っ込み、なんとそのまま家屋と一体となって生活は継続される。ヘッドライトを電灯がわりにチョイと点ける桜むつ子に笑う。しかし最後には家はしっかり瓦礫の山と化す。あるシーンで花沢徳衛が「女の幸せは結婚である」と語るその後ろで、徳衛の妻らしき女は沢山の子供たちに囲まれて、退屈しきった顔でうたた寝をしている。倍賞美津子の寝たきりの弟はトルストイを引き合いに出しながら、結婚=幸せに疑問を呈する。結婚を巡る話でありながら、森崎にとって結婚や家は当然、手放しで賞揚するようなものではないのである。アバンタイトルで下着姿を堂々晒し、感化院の出所が決まり桜の花が散る中を勢いよく走る倍賞は、まるで80年代アイドル映画の主人公のように魅力的に撮られているが、渥美清の登場以後は次第に意思が奪われていき、男が男へ譲渡するモノに近づいていく。終盤、彼女が自らの意思を発揮するのは売春を始めるときである。一般的な家・社会の枠組みの外側に、森崎は人間を見つけるのだ(主演の渥美はもちろん生まれながらにアウトサイダーである)。結婚詐欺師の財津一郎、今回もエッチだったなー。
一