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シリアナのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

シリアナ(2005年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

長年中東で活動していたCIA諜報員のボブは引退を考えていたが、「脱アメリカ」による民主化を目指すシリアナ王国の長男ナシール王子を排除する任務に就くが失敗。暗殺計画の証人となるボブは、CIAからも命を狙われる。一方、米国政府はナシール王子の父、ハメド王に圧力をかけ、ナシール王子の即位を妨害していく…。

仮想の国「シリアナ」を舞台に、石油利権をめぐって米国政府と企業の思惑が水面化で蠢く濃厚なポリティカル・ドラマの秀作。
同時進行する複数の物語が複雑に絡み合うため、ボーっとしていると置いて行かれるのが最大の難点。
このとびきり濃厚な内容を理解するには、何度も巻き戻して見るしかなかった。
理解を深めながら見ると、全てが繋がっていくラストと、その非情さに震えが来た。

ハリウッド俳優の共演に目を奪われがちだが、物語の中心いるのは仮想の国「シリアナ」の政治改革を求めるナシール王子。
彼は米国石油メジャーの不当な支配からの脱却と石油枯渇後の基盤作りに、エネルギー専門家(マット・デイモン)の知恵を借りつつ、中国市場への参入の足場を徐々に固めていた。
当然、それを不服に思った米国石油メジャーは合併し、勢力を拡大。
その利権に加わる弁護士事務所(ジェフリー・ライト)、そしてCIA(ジョージ・クルーニー)はナシール王子を排除しようとする。
米国にとって中東の石油利権は母国の経済を大きく揺るがす最優先事項なのだ。
米国は手段を選ばず、親米派である王子の弟を即位させ、米国の意のままに操れる政権をアラブに打ちたてようとする。
中国に傾くナシール王子はアメリカにとって邪魔者なのだ。

国家経済と戦争には石油利権が絡み、必ずCIAエージェントが暗躍している。
なかなか思い切った母国批判の暴露映画だ。

この映画をみれば、中東情勢やアメリカを潤すために失業に苦しみ、アメリカを憎むテロリストを生み出される背景など世界の裏側が理解できるだろう。
すべては周到に仕組まれている結果だ。

ラストにCIAは、もう必要の無い暗殺を止めに駆けつけた諜報員のボブもろとも、ナシール王子をミサイルで暗殺する。
そこに人道主義など微塵もない。
後々、ナシール王子にクーデターでも起こされないよう徹底的だ。

対して米国石油メジャーの企業合併により生まれた失業者の中から「神に選ばれた」と、過激派宗教に洗脳された若きテロリストが、合併式典が行われている工場に自爆テロを敢行する。
まるで食物連鎖のように、911テロは起こるべくして起こったのだと思えてしまう顛末である。

何故このような危ない映画が製作され、上映できたのか?
そこがまたアメリカの言論の自由の凄さというか、懐の深いところだと思う。
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