「マンチェスター・バイ・ザ・シー」「ビューティフル・デイ」と来て、この「クロッシング・ガード」で「主人公が過去の出来事で深い傷を負ったお話」が図らずも三連発。
どの主人公もそれぞれ苦悩しているのだが、今作の主人公ジャック・ニコルソンは既に「発狂している」というレベルであり、苦悩というよりは完全に壊れている。シャイニングと被ってくるぐらい薄気味悪いし、誰も手の施しようがない。なので、見てても「ああ過去の傷に苦しんでいるのね。かわいそう」という同情心はこれっぽっちも感じない。
「ハァハァあと3日待ってやる!!」とか、追っかけっこしながら二人でバスに乗ったりするシーン(その間追っかけっこは休止)とか、正直尺を伸ばすだけにしか見えない。その他にも「これって必要??」というシーンが羅列されており、冗長な感は否めない。
一番納得いかないのはラストで、え!あんなに狂ってたのに一瞬で許しちゃうの??今まで何だったん??…とガックシ。予定調和が過ぎるというか、綺麗ごとすぎるというか、なんともはやトホホな印象。
どう考えても脚本に無理があるのだが、これをなんとか成り立たせたのはやはり俳優陣の圧倒的存在感に尽きる。ジャック・ニコルソンはひたすら訳わかんないオヤジだし、デビット・モースはひたすら良い人感ダダ漏れだし、ロビン・ライトはひたすら魅力的で人目を引く。
「インディアン・ランナー」は欠点もあるが強烈な個性を持った映画だと思うのだが、本作は欠点の方が目立っちゃったという感じかなぁ…。
デビッド・モースを「顔が綺麗よね。目の垂れ方とか。子犬みたい」と評するセリフがあるのだが、これって世の女性はかなりの人が同じ意見なんじゃないかなぁ。いかにも優しそうだけど、ちょっと母性本能をくすぐるようなカワイさがあるんよね。