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モンスター・ハウスのRenのレビュー・感想・評価

モンスター・ハウス(2006年製作の映画)
3.5
モーションキャプチャーを駆使したアニメーションとしても、ジュブナイルホラーとしてもしっかり楽しませてくれた。ファンの多そうな作品だけど、自分もかなり好き。制作総指揮にスピルバーグとゼメキスがいるのもわりかし納得だった。

『ぼくらと、ぼくらの闇』『サマー・オブ・84』のジュブナイルの空気感を思い出した。序盤、家が二軒向かい合っているだけで恐怖を煽る感じも、子どもの恐怖ってこれくらい身近なところにあるよなという納得感がある。

ひたすらに「家」の怖さを表現していて素晴らしかった。窓やドアが顔に見える表面的な恐怖から、他者が介入できない(何があるのかは持ち主しか知らない)閉じた空間であるという本質的な恐怖へ。
家に入ってほしくない人間イコール敵、という価値基準が揺るがない。チャウダーやジェニーは部屋に招き入れられるので仲間、ベビーシッターや彼女の恋人(?)のミュージシャンは居るだけで居心地が悪いのでDJにとっては敵。向かいの家にとっては、家主のネバークラッカー以外全員が敵だ。

そこに乗っかるのが絶妙な気持ち悪さのCG。はっきり言って不気味の谷のど真ん中なのだけど、「敢えて人形っぽい質感に寄せる」という解決策で乗り切ったのが偉い。髪の毛とか衣服とかもっと描写できそうなものを敢えてしない。『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』や『ジャイアント・ピーチ』を観ている錯覚に陥るが、そこをモーションキャプチャーにすることによって「ストップモーションではあり得ないヌルヌルした動き」が加わり、なんか気持ち悪いという今作ならではの味を出していた。

今作を観ると、家とは墓なのだと思えてくる。家には自分にしか分からない記録や思い出の品があって(というかそれしかなくて)、そんな記憶や過去の呪縛と共に生活しているということ。そこに浸るのも素敵だけど、そんな呪縛を解き放つこともまたカタルシスだ。

その他、
○ 冒頭の落ち葉を追い続けるカメラワークが完全に『フォレスト・ガンプ ~』で、ゼメキスだ〜!となった。
○ 終盤の過剰なアクションもまたアニメ的な快楽。いくら技術が発達しても、実写ではあれはできない。
○ ゲーマーの兄ちゃんのシークエンスはいくらなんでも長い。不要だと思った。
○ キスのときの反応が思春期の気持ち悪さ全開で良かった。
○ "ネバークラッカー" の語感が良い。



《⚠️以下、ネタバレ有り⚠️》










コンスタンスの過去と現在。かつてトマトや卵を投げつけられていたことと、家が芝生に入ってきたモノを飲み込む行為は呼応している。自分に向かってきたものを「食べる=加害する」形で、自身と家を守ると同時に復讐している。

思えば、あの時コンスタンスが死んでしまうきっかけとなった子どもたちへ憎しみや復讐の矛先を向けている訳ではないネバークラッカーは健気だ。あくまでコンスタンス(の夢だったマイホーム)を守ることで行動の動機が一貫している。純愛だったんですね。だから二人のエピソードはもっと欲しかった。
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