ヨミ

ダイヤルMを廻せ!のヨミのネタバレレビュー・内容・結末

ダイヤルMを廻せ!(1954年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

めちゃくちゃ面白かった。ハラハラさせられる。
ヒッチコックが「サスペンスの帝王」であることがわかる。

事件直後、駆けつけた主人公は妻の鍵を鞄から抜いたことを悟られまいと、鞄を意識しながら死体に寄るが、鞄が常にフレームに収められている。しかもかなり大きく映っている。そして鞄がフレームから外れたと思った次のショットでは妻がその鞄を漁り始める。思わず息を飲む。ここの妙には思わず唸ってしまった。上手すぎる。

また、「鍵は『2本』じゃなく『3本』あった!」(と書くと『ジョジョ』っぽくなるね)的なトリックは単純だがよくできていて、ミステリーとして面白い。そして立証するために主人公自らに扉を開けさせ、その前に妻には扉を開けられないと示しておく。「なるほど!」と面白く観れた。

ただ、やはり今の時代から観るとキツい部分は垣間見える。別にヒッチコックが悪いわけではなく、今の社会通念と合わないというだけだが。特に男性警部補が妻の女性ものの鞄を警察署に戻しに行くときに「そのままだと捕まるぞ」とするシーンはやはりイギリスでのセシュアル・マイノリティが如何なる扱いを受けているかが如実に現れている。そういう意味ではむしろ空気感を知ることのできる良いシーンなのかもしれない。
個人的には、なんで浮気した方がめっちゃいい感じなのという引っ掛かりがある。殺害が重罪であり、悪であるのは当然だが、推理作家が「善」ではないのは間違いない。なにしろ推理作家は真実には到達できず、警部の推理が正解となる。探偵役が出てくるのは後半なのだ(それ自体は面白い仕掛けだと思う)。
推理作家と妻の関係性について、妻にしか罰は与えられない。妻は殺害未遂と冤罪・投獄という極めて重い罰を受けるが、推理作家はわりかしのうのうとしている。ここに無意識の男女不均衡はありはしないか。少し立ち止まる必要を感じて4点は付けていない。
ヨミ

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