半兵衛

虞美人草の半兵衛のレビュー・感想・評価

虞美人草(1941年製作の映画)
3.6
夏目漱石特有の言い回しや舞台となる明治の東京が見事に再現されていてさすが若い頃は文学青年だったという中川信夫監督の気合いの入りようが伝わってくる、そして中川監督による映像テクニックが繊細に夏目ワールドを表現していて唸らされる。

重要な場面である博覧会のシーンの美術がスケールといい見世物の完成度といい凄くて、戦争直前における映画界のレベルの高さを感じさせる。そしてそんな博覧会を見に訪れた大量の客を、上からワンカットでクレーンやドローンのように撮影していく手法が凝っていてまだ撮影技術が未熟だった時代にどうやって撮影したのだろうと気になった。

役者では高等遊民の主人公を演じる高田稔やその友人である江川宇礼雄がいかにも明治の人間らしい雰囲気を醸し出していて良かった、特に江川氏は口調もよくて夏目漱石ならではの文章がはまっていた。そして彼らの友人役で出演する瑳峨善兵が若くて一瞬誰かわからなかった。

ラストも江川氏の演技が見事に締める。
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