無学

帰って来た木枯し紋次郎の無学のレビュー・感想・評価

帰って来た木枯し紋次郎(1993年製作の映画)
3.0
※再レビュー

往年のテレビ時代劇のなかで
もっとも好きな作品。
はぐれ異三郎といい、股旅モノは面白い。

「こいつぁ、癖ってヤツで」
「もう会うこともござんせんが、随分とお達者で」
「あっしには関わりあいのねぇこって」

紋次郎の究極のニヒリズムと、
たまさか袖擦り合った相手達をからめとるカルマの対比。

相容れぬはずのその温度差は、結果として紋次郎の意志と裏腹の展開として進むというフォーマットだが、
渡世人が併せ持つ、義侠心と非道の二律背反は、
捕物帖などの単純構造のテンプレとは違ってシビれるわけでごさんす。

オープニングで上條恒彦が唄うは、
無宿者にも安らぎは与えられるべきという慈悲。

ラストは旅烏の紋次郎がせなで奏でるエレジー。
この温度差もまた、毎回余韻を生むわけでござんす。

市川崑は、日本映画界の至宝であることは論を埃たない。
しかしだキョーダイ。

テレビ版のニューウェーヴ的な匂いが
この大家にかかるとすっかりと消えっちまうんだな。

中村敦夫の老いもそうさせるのは仕方ないにしろ、死んだ筈だよお富さん。もとい、紋次郎さん。
まさか生き永らえて、木こりになっていようとは…!

上條恒彦の主題歌よろしく、誰かが風のなかで見つけてくれたそこが安住の地。

結局、渡世の道に戻るとはいえ、
車寅次郎が放蕩無頼をやめて月給取りになっている姿を見たいと思うファンがどこぞにおるのかってくらいのモンよ。

あ、寅さん新作どうしようかなぁ。。

ってそうじゃなくて、テレビ版との毛色の違いが口に合わず、ダークヒーローが正義の味方になっちまったら面白さ半減ってことで、

ごめんなすって。
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