Mikiyoshi1986

好奇心のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

好奇心(1971年製作の映画)
4.5
明日11月23日は私が敬愛するフランス映画監督の一人、ルイ・マル監督の命日。
没後22年目を迎えます。

ルイ・マルは変幻自在な作風で数々の名作を残した大変稀有な映像作家ですが、
特に70年代は本作『好奇心』を皮切りに『ルシアンの青春』『ブラック・ムーン』『プリティ・ベビー』と、10代の少年少女を主人公にした作品を立て続けに発表しています。

とりわけ本作は単なる性愛に固執しない"モラル及び貞操なるもの"をあくまで個人的な範疇に留めつつ、更には私小説としての体を成して展開させ、
実際にルイ・マル自身の幼少体験が投影されたとされる母子相姦の物語。

ブルジョワ家庭で育ったルイ・マルの追憶は14歳の主人公ローランに反映され、
イタリア出身の美人ママをレア・マッサリが好演。

思春期の少年ローランに芽吹いたのは性への目覚めとそこから押し寄せる好奇心、そして誰もが羨む美しき母親への純粋な愛であり、
"禁忌"を禁忌として陰湿に描く趣が一切ないのも如何にもフランス的であると云えます。

イタリアなら退廃的に、イギリスならサスペンス風に、アメリカならショッキングに、日本ならエログロナンセンスに描くところを、
本作はあくまで開けっ広げな自叙伝の一篇とする点にフランスのお国柄が垣間見れます。
また幕切れが大変絶妙なのも感嘆の極みであります。

性という未開拓ゾーンに訳も分からぬまま突入していく思春期ボーイの心境を如実に、丁寧に描写していくルイ・マルの手腕はやはり圧倒的であり、
童心を尊ぶ精神は後に集大成『さよなら子供たち』へと収束することに。

アントニオーニ『情事』では美しすぎる背中と素晴らしい肩甲骨を魅せたレア・マッサリですが、本作でもその芸術的な"裸背"と美尻を遺憾無く披露しており、
また11年前の『情事』よりも遥かに若々しく艶やかに映る彼女は、本作のヒロインとして最適だと云わざるを得ません。
Mikiyoshi1986

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