オーウェン

卑弥呼のオーウェンのレビュー・感想・評価

卑弥呼(1974年製作の映画)
3.0
篠田正浩監督の「卑弥呼」は、日本の古代史について、一つの奇抜な幻想を展開してみせた映画だ。

脚本を書いた富岡多恵子と篠田正浩は、有名なヤマタイ国の女王・卑弥呼を手掛かりとして、古代日本を、アマツカミをまつる国と、クニツカミをまつる国との対立抗争という局面で捉えている。

アマツカミをまつる国というのは、巫女が鏡を用いて、神意をうかがいながら政治を行なう、神道につながる国。

クニツカミをまつる国というのは、グロテスクな扮装をした人々が、銅鐸を打ち鳴らしている国。

卑弥呼(岩下志麻)は、このアマツカミをまつる国の巫女であり、物語はこの国の内部の政権争いと、クニツカミをまつる国を征服することとが、ないまざった形で進行するが、実のところ、その政治的な葛藤は、卑弥呼とオオキミやその息子たち、宰相のような立場にある老人(三國連太郎)、卑弥呼の弟のタケヒコ(草刈正雄)などの複雑に入り組んだ関係が、かなりわかりにくい。

古代日本の政治とシャーマニズム、それとエロスとの関わり合いなど、発想はたいへん奔放に思われるが、印象に残るのは主として、視覚的な奇抜なアィディアだ。

神道のイメージにつながるデザインなどは、いたって平凡だが、三國連太郎の衣装などは、かなり斬新でアッと言わせるものがある。

最後に、古代人が林の中で叫んでいたと思うと、ヘリコプターでカメラが後退して、そこが古墳であることがわかる。
そして、これらの古墳の中には、まだまだ、古代史の謎を明らかにする材料が、いっぱい入っているはずだ、と思わせる結びになっている。

篠田正浩監督は、次々と風変わりな映像を打ち出してみせているが、いささかとりとめがなかったような印象を持ちましたね。
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