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ムカデ人間のkuuのレビュー・感想・評価

ムカデ人間(2009年製作の映画)
3.5
『ムカデ人間』
原題 The Human Centipede (First Sequence).
映倫区分 R15+.
製作年 2009年。上映時間 90分。
狂気に満ちた医師が、複数の人間の口と肛門とをつなぎ合わせ“ムカデ人間”を作ろうとする姿を描くオランダ・イギリス合作ショッキングサスペンス。
日本人男性役で人気ドラマ『HEROES ヒーローズ』(みたなぁタダシってやくやったかな)にも出演している北村昭博が出演(かなり言葉が関西弁のような四国弁はなんとも云いがたい)。

ヨーロッパを旅行中、ドイツの森の中で立ち往生してしまった2人のアメリカ人女性が、助けを求めて一軒の邸宅にたどりつく。
翌朝、目を覚ました2人は病室のベッドの上におり、隣には同じように日本人男性が寝かされていた。。。

今作品は、かなりキツい作品だった。
しかし、見終えて冷静に考えたら、比較的グロテスクな映像が少なく、手術の切った縫った等の手順が直接描かれることはほとんどなかった。
また、排泄物が画面に映ることもなかった。
なら何故、観てる時に怖さを感じたのか。
その衝撃は一体何やったんか。
それは、想像力が空白を埋めて行く故にほかならないんじゃないのかと思う。
対象となるものに(イカれた手術などあったであろうと想像したもの)恐怖を感じる。
しかし、その後に漠然と不安感が過る。
対象がはっきりしてたはずなのに、はっきり描かれていない。
つまりその対象となるエゲつない行動(手術のあんなことこんなこと)は小生が心の中で勝手に描いてるモノで対象は幻に近い。
幻に近い故に、対象ははっきりしなくなるし不安に襲われてしまうのかと。
そんな心理的な動きを踏まえ、製作してる監督たちの意図ならマジックに他ならない。
そして、後にくる不安感にはもう一つ個人的に思うフシはある。
それは、アドルフ・ヒトラー及び国家社会主義ドイツ労働者党による支配下たちが捕虜に行ったイカれた医療残虐行為を起想するのも加味されてると思います。
今作品を見ていて何度かナチスが過った。
はっきりしてるはずのナチスの残虐行為。
しかし、その残虐行為を行ったのは人、その人の内面ほどはっきりしないものはないと思う。
故に、小生個人としては、不安が恐怖より勝ってるのだと思うし、それはある種の直感が得たモノだとは思いますが。。。
(すべての方に通じる感情ではないと思います)
深読みするなら、登場するイカレポンチの医者ヨーゼフ・ハイター博士はドイツ人(現在のドイツの方々は一切関係はないのですが)に加え、ヨーゼフ・ハイターのファーストネームは、アウシュビッツ強制収容所で囚人に対する拷問実験を行ったナチスの医師ヨーゼフ・メンゲレにちなんだものであるそうだし、ハイターという苗字は、ドイツ語で文字通り『陽気な』ちゅう意味やったと思うし今作品の博士のキャラと当てはまらないが、また、あまり知られていないナチスの戦犯であるフェッター医師とリヒター医師に因んだものだろうと思われる。
もし、製作陣が小生の推測(当てはまるとこと、そうでないとこもあるが)を意図的にしているなら、もろ手を挙げ、今作品をホラーフィクションを喜べない心もあります。
でもまぁ、そんな石頭的な作品ではなく、あくまでも、それは小生の杞憂で、ただ単に重なるとこがあるだけのホラーだと思いたい。
ですので、ホラー映画作品としての感想ですが、今作品は独創的なホラー映画のコンセプトを持ってるのは間違いないです。
終始、次に何が起こるのか気になって仕方がありませんでした。
ヨーゼフ・ハイター博士役のディーター・レーザーは十分に不気味だったし、その意味でイカレポンチ役をうまく演じていた。
確かに、彼のキャラ(特に動機)についてあまり説明がなかったために、不気味に見えたかもしれないが。。。
個人的には、すべてを説明されるよりも、その方が考えさせられるし、自分の頭でより効果的な恐怖を作り出せるので、ホラーやスリラーの点はよかったと思います。
ただ、今作品は衝撃を与え、恐怖を与え、嫌悪感を与えることを目的としており、『もう止めたれよ』と叫びたくなる。
そこに脇役もいい味出してました。
ただ、演技が過剰なところは否めないですが。
また、『The Human Centipedeムカデ人間』というタイトルは間違いなく裏付けられてはいるけど、エンディングは少し残念で、反クライマックス的で、ここまでやるとは思いませんでした。
今作品の続編があるのは知ってます。
しかし、それをどのように展開されるのは分からない。
エンディングから追いかける以外に今のところ意味はないが、まっすぐな続編ではなく、そうなることが想像できる前日譚でなければ、そこからどこへ行くのか。
タイミングがあったときにでも観てみたいかな。
今作品は不安で釘付けになったし、その意味においては、ホラー映画のあるべき姿であるんやろけど、しつこいですが、どうも引っ掛かる作品でした。
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