YAEPIN

猿の惑星のYAEPINのレビュー・感想・評価

猿の惑星(1968年製作の映画)
4.4
前に観たと思っていたが、オチ以外ほとんど覚えていなかった。
後世のシリーズ化から、普通にエンターテインメント要素の強い作品だと思っていたので、ここまで痛烈な皮肉が込められているのに驚いた。

宇宙飛行士達が不時着した惑星では、猿が生態系を支配しており、人間は下等な獣として扱われている。
そのコンセプトは事前に頭で理解していたが、いざ人間を「獣医」に診せているとなると強く違和感を覚えた。
ただ、それは人間が今この地球で振る舞う態度と何も変わらない。
むしろ、人間は当然のように他の動物を「獣」として線引きするだけでなく、彼らの暮らす自然を破壊している。
猿達が人間を殊更に恐れ、嫌うのも最もだと思わざるを得ない。
まるで芥川龍之介の小説のような自己批判の精神で作られた映画だと思った。

そして、猿の支配が確立した経緯に対し、宗教的な物語によって説明が付けられている一方、科学的、考古学的なアプローチでも研究されているのが興味深かった。
複雑な人間社会が冷静な視点で分析されている。

もちろん説教臭いだけではなく、アドベンチャー映画としてもしっかり楽しめた。
船長の会話能力がどのように猿に伝わるのか、彼は逃げ出すことができるのか、予想のつかない展開が続く。
船長が喉を攻撃され、簡単には話せないという障壁が面白さを増していた。

また、音楽がかなり独特で魅力的だった。
獣の咆哮のようなイントロで始まるオープニングから、ストラヴィンスキーの『春の祭典』のような原始的でコズミックな雰囲気の音楽が作品を彩っていた。
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