男はつらいよシリーズは50本観てしまっているが、BS4Kでの4Kリマスター版を久しぶりに鑑賞。
34作目「真実一路」を初めて観たのは1984年の劇場公開時だった。それまで時々テレビなどで観た事のあった男はつらいよシリーズだったが、毎回のパターンと映画としての古い作りに当時の自分はあまり惹かれていなかった。しかし、とらやの茶の間での寅さんのセリフ「そんなに急いで食ってると口ん中でウンコになっちまうぞ」で笑ってしまい、この作品から男はつらいよシリーズを観るようになった(笑)
証券会社のサラリーマン(米倉斎加年)がサラリーマン生活に疲れて鹿児島に逃げ、妻(大原麗子)と寅さんが追いかけるという話。84年というバブル突入期のイケイケ時、寅さんとは全く真逆の立ち位置である証券会社のサラリーマンを対比配置して、人にとって何が幸せなのかを今一度提示する作品。兜町と寅さんの画は今観てもなかなか違和感があり効果的。
シリーズ通して言えるのだが、地方ロケの風景が本当に素敵。昔は何処にでもあった街の風景だが、令和の今となっては撮りたくても撮れない風景になってしまった。背景に写る旅宿の古びた感じ、商店のアルミサッシの汚れた感じ、リアル昭和の風景が嬉しい。
映画後半で旅に出るという寅からの電話、さくらの「良かったねお兄ちゃん…」のセリフ、倍賞千恵子の圧倒的優しさのある演技に久しぶりに凄い女優だなと思わされる。
「自分の醜さに苦しむ人間はもう醜くありません」