滝和也

真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 殉愛の章の滝和也のレビュー・感想・評価

3.6
将星墜ちるべし!

退かぬ!媚びぬ!
顧みぬ!

天に極星はひとつ!
今必殺の秘奥義が炸裂する!
北斗神拳秘奥義!天破活殺!

「真救世主伝説 北斗の拳
 ラオウ伝 殉愛の章」

前回、懐かしの映画版を見て北斗の拳熱が高まった所でこちらの作品に。偶然ながら何となく繋がっちゃう展開でスタートしてます。(レイは死んだ事になる映画版だとユダは出なくなりますし…)

北斗の拳の中でも大人気の南斗最強にして最狂の男、聖帝サウザー編をストーリーの軸として、その裏側にあったラオウのストーリーを打ち出した正に列伝らしい作りの作品です。

ラオウにはラオウのストーリーがあって然るべき。その通りなんですよね。もう一方の主役ですからね。ケンシロウに正義があらばラオウにもラオウなりの正義があり、覇道を往くわけですから。

その覇道の理由の一つには原作で後に判明する修羅の国で交わした理由が。そしてもう一つ乱世を纏める、終わらせるための拳、暴力の必要性があった訳です。ケンシロウの存在に光を見ていたのは師父リュウケンや次弟トキだけでなく、長兄であるラオウもまた然り。それを敢えてハッキリ見せる演出は北斗の拳ファンならわかる所。敢えて時代の捨てごまとなるやもしれぬ役割を末弟ケンシロウとの戦いまで演じていく、その兄としての偉大さが描かれています。(でもこの演出だとラオウも最終秘奥義に到達しちゃいますが…(笑)北斗の拳ファンわかります)

その姿を浮き上がらせる為に狂言回しとしてヒロインレイナが存在し、その兄ソウガが登場しています。アイデアとしては悪くないですし、そこは楽しめました…。

ただ…その演出に時間を割いたゆえに、割を食ってしまったのがサウザーの背景。お師さんが出てこない故に彼のキャラクターが愛される様になる理由がない。愛ゆえに人は苦しむ、故に愛を捨てた聖帝となった理由が希薄になってしまったのは残念以外の何者でもない…。

とは言え、それ以外のサウザー編の良さはきっちり出ています。まずは聖帝に相対するレジスタンスである南斗六星拳の一人、仁の星を持つ南斗白鷺拳のシュウ。ケンシロウの光をいち早く見出した南斗の男であり、正に勇者。愛深く、自らの命まで投げ出すその仁なる崇高な魂を持つ男。その姿に正に涙します。サウザーとの対比も見事であり、このサウザー編の人気を支えています。息子の最後も少年誌に掲載されたとは思えぬ凄絶さ。この仁の星のさだめとは言え…(T_T)

そして、北斗神拳が通じないサウザーとの戦い。この戦いがやはりクライマックスです。秘孔をつかれても平気(笑)なサウザー。南斗鳳凰拳の圧倒的スピード。サウザーの台詞。そして秘奥義の激突、どれをとっても名勝負なんですよね。そして天破の構えから打ち出される北斗神拳秘奥義、天破活殺!これが演出と相まって最高なんですよ。1番好きな技かもしれない。

演出は基本原作とTVアニメと変わりないんです。絵はすごくTVアニメに比べ良くなってます。ただ…声がね。ケンシロウに阿部寛、ラオウに宇梶剛士と声質は悪くないけど如何せん声優さんに声の演技は負けますわ…。ヒロインに柴咲コウですが…こちらは下手なレベルですからね。残念ながらここで減点されてます。

返す返すもサウザーとお師さんの話があと10分でいいから入ってたら…声優さんがそのままなら…間違いなくこの話は4点超えなのに…残念。サウザー編が大好きなのでこの点数にしましたが…。愛ゆえに人は苦しむ…(笑)と言うところでしょうか(笑)
滝和也

滝和也