つるみん

牯嶺街少年殺人事件のつるみんのレビュー・感想・評価

牯嶺街少年殺人事件(1991年製作の映画)
4.2
デジタル・リマスター版は鑑賞済。

BBC(英国放送協会)が「21世紀に残したい映画100本」に台湾映画として唯一選ばれた作品。

1960年代初頭の台北。戦後、新天地を求め中国大陸から台湾に移住した外省人たち(台湾省以外の出身者)の家族、恋愛、友情の物語。親世代の焦燥感と不安は自然と子供たちの世界に反映され、誰をも閉塞感に陥れさせ救いようのない分断をさらけ出す中で必死に〝希望〟を掴もうとする少年たち。
劇中、痛いほどリアルに描かれる青年期特有の光と闇。だが最後に残ったのは想像以上の美しく甘美な余韻。こんなにも映像が肉体と精神の全てに沁み渡る経験は今までに無かった。

60年代の台北を映すノスタルジックな映像をシンプルなカット割りでリズムを作り、出来るだけ説明を省いた台詞回しが組み合わさる事によって生まれる魅力が188分という長さを全く感じさせなかった。
もちろん光と影のコントラスト、長回しからのシンプルなカット割り、台詞回しなど全てにおいて印象的で脳裏に焼き付けておきたいものばかりだが、少年の純粋無垢な心が起こす衝動が悲劇となる瞬間の絶望感は一生忘れないであろう。
盗んだ懐中電灯で闇を照らしていく主人公だが、それを手放した後に起こったのは………。

電球や懐中電灯が付いたり消えたりするような青年期の感情の起伏をボーイ・ミーツ・ガール形式に展開されるその様子は初々しさと痛ましさが愛と暴力で表現されていた。
つるみん

つるみん