ノラネコの呑んで観るシネマ

九尾の狐と飛丸(殺生石)のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

九尾の狐と飛丸(殺生石)(1968年製作の映画)
4.2
都立多摩図書館上映会。
元大映の中島源太郎が設立した日本動画が、1968年に製作した唯一の長編。
ネガフィルムの所在が不明で、権利関係も不明瞭、現存する唯一のプリントが多摩図書館所蔵の16ミリという貴重な作品だ。
タイトル通り、「殺生石伝説」をアニメーション映画化したもの。
那須に暮らす逞しい少年飛丸は、美少女の玉藻と相思相愛。
ところが玉藻の正体は、嘗て殷の国を滅ぼした悪霊の生まれ変わり。
悪魔によって覚醒させられて、日本を乗っ取るために京へと去る。
非常に生真面目な作りだが、クライマックスなんて怪獣映画みたいな演出で面白い。
同時期に作られた「太陽の王子 ホルスの大冒険」とは、逞しい少年と悪魔に操られた魔性のヒロインが、愛し合いながら対立するという共通点があるのが興味深い。
いかにも60年代的だが、玉藻はけっこう萌えるデザイン。
飛丸に袖にされちゃう千草ちゃんが可哀想。
全編を観たのは初めてだったが、予想以上に完成度は高く、今観ても十分楽しめる。
程度の悪くないこのプリンントが失われると、本当に幻の映画になってしまう。
鈴木英夫と増村保造が構成に関わってたりするし、何とかNFAJでデジタル保存の道を探って欲しい。