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引き裂かれた女のmimagordonのレビュー・感想・評価

引き裂かれた女(2007年製作の映画)
4.6
その愛は本当に「愛」なのか。そもそも「愛」ってなんだ?フランソワ・オゾン監督の『焼け石に水』のキャッチコピーは確かこんなものだった。「惚れた方が負け」。実際の事件に着想を得てるらしいが、サスペンス調のラブストーリーだと受け取った。ただ、この映画は先述のオゾンの映画と全く違う点が一つ。それぞれが皆相手を愛しているつもりなのだ。少なくとも本人たちはそう思ってる。男二人の部分的な愛に対して自らの愛を貫こうとしたガブリエルは、雪のように純であり、天使であり、それが故にその羽根を折られてしまう。真面目に愛など考えてはいけないのか。切なさがブラックユーモアに包まれて、少しばかりの甘さを滲ませながら苦味という余韻を残す。私はこういう映画には滅法弱いのでどうしても贔屓目になるが、それでも傑作と言って差し支えないだろう。ガブリエル役リュディヴィーヌ・サニエのまばゆさが物語の説得力を格段に上げている。フランス映画がそれとなく描く愛の哲学って、やっぱり面白いなぁ。
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