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三人三色のAZのレビュー・感想・評価

三人三色(2004年製作の映画)
2.8
アジア圏で活動する3人の監督によるオムニバス映画。監督は、ポン・ジュノ(韓国)、ユー・リクウァイ(香港)、石井 聰亙(日本)。ユー・リクウァイ監督だけ知らなかった。プロフィールを見た感じ映画監督というよりは撮影監督かな。作品も一番撮り方にこだわりを感じた。

デジタル映像ということもあり、映像の質感は安っぽい。その中で、新しい表現を模索していた。ただ、個人的に「インフルエンザ」以外は難解で睡魔に襲われた。

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▶︎詳細は以下
『三人三色』とは、韓国チョンジュ映画祭がデジタル映像による新しい表現を求め、毎年アジア圏を中心に選出した3人の映画監督に依頼して製作されるオムニバスである。ルールは3つ。デジタルフォーマットでの撮影・編集。30分程度の短編であること。5000万ウォン(約500万円)以内の予算で製作すること。

「インフルエンザ」- ポン・ジュノ
商売がうまくいかなかった男性が徐々に生活が苦しくなる中で路上生活者となり、犯罪に手を染めていく姿を防犯カメラの映像で捉えた作品。徐々に狂気性を帯びつつ、その中にコミカルな笑いが含まれている。実験的な作品を作りつつも、しっかりエンタメ要素を感じさせてくれるのはさすが。一貫してお客さんを意識した映画作りをしているなと、改めて感じさせられた。最後のカオスな感じは好み。症状が悪化していく感じは、個人的にエドワード・ヤン監督の『恐怖分子』を感じさせた。

「夜迷宮」- ユー・リクウァイ
近未来都市プラスティックシティ。大寒波のために地上での生活が不可能になり、人々は無人の地表から50層ほど下にある宿泊所で生活している。ビールの空き缶を集め、ペットのように引きずる男キリンが主人公。そこへ逃げてきた男女の一行。ピンボケした映像、幻想的な描写が特徴的。男性と女性が抑圧の中で出会い、そして恋に落ちていく姿をゆったりとした空気感の中で描かれる。低予算の中で、狭い空間での撮影をし、はっきりと物事を映さないことで抽象度を高め、近未来感を出している。だが、時に人との関係ははっきりと写す。どんな世界でも愛は普遍的なものということか。夢の中をのぞいている様な作品だったが、内容よりも表現に重点においていた印象。なんとなく美しいことが起きている様にも見えるが、誤魔化されたものを見せられているようにも感じてしまった。

「鏡心」- 石井 聰亙
これは監督の実体験なのだろうか?監督のパートナーであった女優であり作家でもある女性が、映画制作に悩み苦しむ。自分の中にある表現し難いものをどう描くか苦しみ悩む。その苦しみは最後まで何なのかわからない。わからないからこそ不安になる。そしてことを起こしてしまう。そこで女性は不思議な体験をする。同じ行動、同じ夢と空間を共有した知らない女性との出会い。この世には偶然とは思えない奇跡的な出来事が時に起きる。そういったことの連続で、人生はうねうねと変化していく。こちらも夢を見ているような作品。

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正直ポン・ジュノ作品以外は理解が難しかった。ただ、限られた条件の中で何をどう表現するかは勉強になる。

結局抽象度を高め、余白を大きくすることにより、鑑賞者に大部分を委ねるしかないのか。結果、夢の世界のようになってしまう。悪く捉えればそれは誤魔化し。むしろ、その制約の中で面白い作品として仕上げたポン・ジュノの凄さを痛感させられた。
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