mimitakoyaki

JSAのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

JSA(2000年製作の映画)
4.2
パクチャヌクの作品は割と観てきたのですが、本作は、南北の軍事境界線で起きる悲劇という漠然としたイメージで、しんどい話かなと決めつけてスルーしてました。
しかし「別れる決心」を観て、パクチャヌクの過去の名作をちゃんと観てみようと決心したというわけです。

重暗い話と言えばそうなんですが、ひょんな事から交流が始まって、敵味方を超えて友情を築いた4人の若い兵士たちのシーンは、ほんとにほのぼのとしてて、人間味が溢れてて楽しいんですよね。
一緒に酒やタバコをやったり、冗談言い合ったり、銃弾でのおはじき遊び、腕相撲、ケンケン相撲に押し相撲…と、キャッキャと無邪気に遊ぶ姿なんて中2の少年みたいで、こういう男同士がはしゃいで遊びながら、互いに兄弟みたいな打ち解けた関係になっていくのが本当に良いんです。

遊び方をみんなが知ってて、次あれで勝負しようぜ!ってすぐに遊べるのも、元は一つの国の同じ民族だからこそですもの。
同じ言語に同じ文化を持つ者同士、今は分断されてても、垣根がなければすぐに絆を結ぶことができるんだって感じて、だからこそこんな悲劇が起きてしまった事がとても悲しく切ないのです。
そこに戦争がもたらしたものの大きさをあらためて感じさせられました。

20年以上前の作品ですが、今や韓国を代表するベテラン名俳優となったソンガンホやイビョンホン、イヨンエ、シンハギュン、キムテウなどの若い姿を拝めます。
とは言え、ソンガンホは若い時から上手い!
彼独特の味わいがもうこの頃から備わってたんだと驚きました。
ソンガンホが北朝鮮の兵士を演じたことで、とても人間味があっておおらかで情にあつく、でも肝心な時には冷静な判断ができる、まさに理想のヒョンなんです。
北朝鮮を単なる敵として描くのではなく、彼らもひとりの人間で、優しさもユーモアも葛藤もある、ちゃんと心があるんだっていう人間性をしっかり描いているし、それをソンガンホがほんとに魅力的に演じてるんですよね。
あらためてすごさを感じました。

パクチャヌクの生み出す映像はこの頃から上手かったんだって思ったし、「別れる決心」と同じように、ひと昔前の歌謡曲が音楽で使われてたりして、もうスタイルとしてあったんだなと思って、楽しく観ました。

まあ、あんな簡単にしょっちゅう北の詰所に行けるもんかな、とも思いますが、戦争や分断がなければという願いが込められた名作でした。

Blu-rayの特典映像で、メイキングやソンガンホとイビョンホンのインタビューが見れるのですが、ソンガンホがこの作品に込めた思いや俳優としての志がほんとに素晴らしくて、演技が上手い俳優というだけでなく、人として尊敬できる偉大さを感じて、ますます好きになりました。
ほんとにかっこいい!

イデヨン 15作目
キジュボン 15作目

10
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