Jun

サウンド・オブ・サンダーのJunのレビュー・感想・評価

サウンド・オブ・サンダー(2004年製作の映画)
2.9
時間旅行が実現した未来を舞台に、富裕層の道楽と化した恐竜狩りで起きたトラブルがやがて人類滅亡の危機を招く様を描いたSF映画。監督のピーター・ハイアムズと言えばB級路線を軸に良作を多く手掛ける職人監督といったイメージを持つが、本作は決して出来の良い作品とは言えない。特にCGの稚拙さは制作年を考慮しても驚くほどレベルが低く、また役者と背景が全く馴染んでいない、もろにグリーンバックの合成をしているなと目に付くシーンも存在する。それもそのはず、今作に纏わるトリビアを探れば、撮影先のチェコで起きた大洪水によってセットが破壊されてしまったことや、製作会社の破産、予算の枯渇といった、無事に公開できたことが不思議に思えるほど悲惨なエピソードが多数語られている。そう言えばピーター・ハイアムズって、トラブル続きで後から就任した『エンド・オブ・デイズ』(1999年)も難なく完成させた手腕が評価されていたっけ。この作品も完成に辿り着けた点だけでも評価に値するのかもしれない。
本編を一言で形容するなら「頭の悪いSF」だ。人類存亡に関わる規模でバタフライ・エフェクトを見せてくれるが、ほとんどタイムパラドックスを無視した展開と終わり良ければ全て良しな物語の閉じ方には唖然としてしまう。けれど早々にB級以下と割り切ってしまえば、スピーディに襲い来るパニック要素が楽しく意外と飽きずに観れてしまう。馬鹿な上司の利己的な節約が事態を悪化させた点なんて下らなすぎて最高に面白い。目に見える形でタイム・ウェイブが起こるのも、ヒロイン博士が提示する解決策がご都合主義にまかり通るのも、髪のあるベン・キングズレーも、ツッコミどころを挙げ始めたらきりがないくらいだけど、嫌いになれない作品だ。
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