たらこパスタ

ファニーとアレクサンデルのたらこパスタのネタバレレビュー・内容・結末

ファニーとアレクサンデル(1982年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

5時間という長尺かつ物語の密度がとても高かったです!!

あまりまとまりがない感想になってしまいましたが印象に残った点を記録しておこうと思います!

まずはそのビジュアルや映像の流れ方がとても魅力的で強い求心力でした!
クリスマスカラーの補色とモノトーン中心に色彩が配分されていて統一感があり美しかったです。エクダール家の自宅内の吸い込まれるようなマッドな質感の赤は人物に反射していて包み込まれるような安心感を感じました!
多くの人物が出てきますが近くで見ると似た人はいなく、大人数が混在しているときは衣装の色や形にまとまりがありマクロで見るとすっきりしていてみやすかったです。

人や幽霊が因果律をぶっ壊して突然何かを及ぼして来るんじゃないかという緊張感があって、何が起こるかワクワクする気持ちと何がおこるのかわからない恐怖がどちらもあり強い求心力でした!比較的近景の空間をみている時に、鏡を使って映らない空間が可視化されてたり、ある人物を追う最中の動線や余白に思いがけぬ他の人物を配置していたり、と見えない(または予期しない)部分の空間の広がりがあるんだよということが染みてきて潜在的にずっとあった また、物理的に不可能な人の移動などが繰り返されるうちにそれが当たり前に存在してるように思えてきます!

あと、結構おどろおどろしいヒュードロドロ的恐怖がmixされているように感じる点があったのが面白かったです。

職業や年齢設定や家柄など人物の属性とか、象徴的なアイテム使いなど全てが制度高く物語を語っていて骨太でストイックだなと思いました。時折挟まれるユーモアが肩の力を抜いてくれて絶妙でした。
アレクサンドルの主観が画面内に広がっているのかなと思う割合が比較的大きかったのですが、空想や幻想的なシーンでは、作中で彼がそれまで経験したことを観客が認識した要素により構成されたビジョンであったりして、因果関係に飛躍がないので普遍性があったように思いました。そういった点で私小説的な感じはかなり薄かったです!(自伝的要素はあるようです)
アレクサンドルの主観、グラデーションを持っていて物理現象としてスクリーン内で起きていることの隙間にうまく入り込んだり上書きしているみたいだった

アレクサンドルの言っていたもし神がいるならこんな些細なことで咎めてくるわけがない という趣旨の内容が、率直な彼が抱く神の印象を語っているように思えた。
主教とアレクサンドルの神についての考えや行動の違いを通じて個人の信心と宗教の間に生じるギャップについて考えさせられました。
主教、主教という役割がいつからか自力では剥がれない仮面となって、仮面の下にある暴力性すらもその仮面を一回経由してアウトプットせざるを得ないという悲惨な職権濫用機構が出来上がってしまっているのではないか....

役をいくつも持っていることは曖昧で底のない事実に、蓄積した経験から局所的に法則っぽいものを見出してやり過ごすため便利ツールなのかなと思いました。
役の自覚的さ、とか役を剥がした自己との距離感とかバランス、同一性の捉え方 とかが個人間での差異を感じつつ全体として経験値に連動し変容していくように感じたのは豊かな大人数老若男女各人の描写による賜物な気がします!イスマエルだけ年齢不詳な感じやアンドロギュヌス的でなおかつ神通力持っていそうだったりなど他の人物が共有することのなかった要素を境なく持っていたのが印象的でした

アレクサンドルが模型化した舞台、かつその裏という壁で隔てられたような距離感から役者を観察する始まりと、一番年齢が離れた祖母からアレクサンドルにかけられる言葉で終わるのがとてもスマートで、観た後じわじわと余韻が残りました。

コニャック大好きなおばあちゃん、あんなふうに過ぎ去る時代への切ない悲しみを軽やかにあしらい、周囲に温かい視線を送れる大人に憧れるなぁ〜
たらこパスタ

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