碧

ファニーとアレクサンデルの碧のレビュー・感想・評価

ファニーとアレクサンデル(1982年製作の映画)
4.5
所々に挿入される雨や水の流れる景色がとても瑞々しくて、癒やされる。
美しく趣味のよい衣装を纏い、上質で豪華な家具調度に囲まれた幸せな家族の様子で始まる。
でも後に子どもが虐待される場面がある。
私たち兄弟もそうだったけれど、何かと親と正面からぶつかる上の子、それを見てうまく立ち回る下の子。
ファニーの存在感が薄いのは、虐待される兄を見て、心を痛めながらも、今の自分の力量では兄に加勢しても力不足のため事態を悪化させるしかないと理解し、冷静に状況を分析して目立たない最善の行動をとっているから。
アレクサンデルは、暴力に屈しない怒り、母譲りの物語る瞳と、印象的な口元で義父に立ち向かい、後半の怒涛の展開で一人で主役のように見える。
もちろん母親のエミリーもアレクサンデルを愛しているが、エミリーの印象的で心を奪われる美しさ激しさはどこか危うい。
ファニーは映画・役者の魅力的にはもう少しだけ存在感があってもいいが、空気のように目だたず、必要不可欠な存在としてアレクサンデルのそばにいる。
気づかれないほどささやかかもしれないけど、そのぬくもりは虐待を受けた者の孤独や、将来負の連鎖として自ら虐待する狂気を防ぐ最後の砦になるのではないか。
碧