KKMX

ファニーとアレクサンデルのKKMXのレビュー・感想・評価

ファニーとアレクサンデル(1982年製作の映画)
2.5
 長い、長すぎる!

 5時間11分は、とてもじゃないが集中力が持たなかった。本当に苦痛だった。そのため、本作が面白いのかつまらないのか、出来が良いのか悪いのかよく分からず。
 ただ、好きか嫌いかと問われれば、明確に嫌いと断言できる映画(理由・長すぎる)。ベルイマンの集大成だろうがなんだろうが2度と観ません。


 よくわかんないながらも、印象に残るのは主教エドヴァルドです。ベルイマンの父を連想させるキャラクターでした。神の名の下に家族を虐待するエドヴァルドの姿に、宗教が持つ負の側面がありありと見出せます。ベルイマンもこんな風にやられていたのかなぁ、なんて想像しました。
 そんな父も、仮面が顔に食い込んで離れないとか、息子が怖いとか言っているので、ベルイマンはかなり毒親を人間化できたのだなぁ、としみじみしました。過去作『ペルソナ』でベルイマンは自分自身の二面性というか多面性を掘り下げようと試みたので、想像力がさらに鋭敏になり、悪の象徴にも人間的な苦悩があることを実感できるようになったのかもしれません。
 また、主教エドヴァルドは父であり、ベルイマン本人でもあるようにも思えます。主教エドヴァルドは登場人物の中では最も複雑な内面を持っているので、どこがどう、とは言えませんが結構自分を映しているのでは、なんて想像してます。

 印象に残るシーンは、ヤコビの館にいるイスマエルとアレクサンデルの邂逅でしょうか。深読みできそうな場面でもあるし、イスマエルのキャラが立っているのでポップなサイコホラーとしての単純なエンタメシーンにも思えます。
 自他が融合するという、非常に揺さぶられる場面なのですが、その後の展開がサイキックで仇敵をやっつけるみたいになっており、なんとも通俗的。七瀬ふたたび、とかのノリですからね。ベル井のとっつぁんにしては珍しい。
 本作を撮った後、やりきったという理由で監督業からほぼ足を洗ったわけですから、こういう大衆ウケもやりたかったのかもしれません。


 ほぼ最終作である上、異常な大作なので、本作はベルイマンの集大成的な評価がされがちのようです。個人的には集大成というよりも、リミッターをカットした、遊び心全開の娯楽作品といった印象。カール夫妻やグスタフ夫妻の限りなく無駄でクソなやり取りを長々と描くなど(個人的意見:カメラを止めろ!全部カットだゴルァ)、やりたい放題ですよね。一番記憶に残っているのが、グスタフが屁をこくシーンというのもバカバカしいです。
 登場人物をアレクサンデル、主教エドヴァルド、エミリー、イスマエル含むヤーコビ一家に絞って90分でまとめて欲しかった。画面の美しさに関心のない身としては、この内容で5時間はほんと無理。

 集大成はむしろ『叫びとささやき』なのでは、なんて考えています(叫び〜も好きじゃないんですがね)。


 あと、私はベルイマンをホドロフスキー師匠と比較しながら観ました。両者、ともにエディプス・コンプレックスで苦しみ、虚無との戦いを描いてきました。
 結局、ベルイマンはホドロフスキー師匠にとっての『エンドレス・ポエトリー』を撮ることはできなかった、との結論です。
 本作を観て、ベルイマンは赦しの境地には至れなかったと判断しました。だが、赦しへの旅に出ることはできた、とは思ってます。ここでサイコマジックを中断してしまったのはたいへん残念です。
KKMX

KKMX