このレビューはネタバレを含みます
87点
黒沢清さんの「スパイの妻」を観て、これまでにない、違った意味でのホラーを観て、苦しいくらいの悲壮感を感じた作品だった。
それだけの悲壮感を与えることのできる監督が作っただけあって、「叫」も、やっぱり想像を超える、予想のつかない展開だった。
最後の結末、誰も存在しない、たったひとりぼっちという苦しみを与えられた主人公(世界の終わり)を表していたのに気づけなくて悔しかった。
東京という土地ごと憎んだ少女と、自分を殺した彼を恨む少女、2人の幽霊から離れられない主人公の男。
幽霊といえば白いワンピースに長髪のイメージだったけど、2人とも赤いドレスで、美しくて色っぽいのに、消えることのない怒りや憎しみを秘めていて、鏡に映ってる所とか、陰から見てる所とか、怖過ぎた。
そして、カメラワークが、真上から見下ろしているように撮影していたり、事件の一部始終を側から眺めているように見せていたり、細部までこだわりを感じられた。
構図や光の加減だけ意識して観てだとしても、芸術品を見ているような感じだった。
彼女役を演じた小西真奈美の、最後の嘲笑うシーン、その奥に潜む恐ろしい憎しみを感じる笑顔のような表情は、本当に恐ろしかった。
総じて言うと、意味がわかると、これまでに感じたことのない恐ろしさと言う感動に気づき、はぁってため息が出てしまうような作品だった。
黒沢清さんの作品全部見たい。