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叫のSSDDのレビュー・感想・評価

(2006年製作の映画)
4.2
◾︎概要
地震によって液状化が激しい埋め立て地にて、赤い服を着た身元不明の女性の遺体が見つかる。
刑事の男は何故か既視感を覚えながら、事件を追うのだが身に覚えのないが自身を疑うような物証に焦りを感じる…。

◾︎感想(ネタバレなし)
最も好きな邦画ホラーのCURE/キュアの黒沢清監督と、役所広司さん主演ということで以前から観たかった作品を今年100本目に観ました。

黒沢清監督の現実世界なのに何故か、異世界のような質感がある不思議な映像が秀逸。
あえて被写体を中央に捉えないのは以前からだが、やはりホラーとの相性がいい座り心地の悪さを演出している。
また出てくる建物や屋内もどこか不思議で、妙な構造であったり、そんな取調室や警察署はないだろうというものなのだが、妙な現実的な物と広さや構造だけがミスマッチすることで異質だが現実的な空間が演出されている。

ホラー演出の中でもかなり奇抜な演出を試みている作品のため、明らかに手垢だらけのベタな演出と思う部分をいきなり塗り替えるような演出が素晴らしかった。
Jホラーで怖いと思わないのだが、思わず"おおっ"と声を漏らすほどこれは嫌だというのはあった。

予想を裏切る展開と演出。
奇抜なカメラアングルに、異質な空間、やたら現実的に淡白なリアリティのある演技と、役所広司さんの名演が素晴らしい作品でした。









◾︎感想(ネタバレあり)
・赤い服の幽霊達
無機質な恋人に違和感を覚えるのだが、やはり幽霊であり赤い服の女性と混濁して吉岡の中では存在するため、赤い服の幽霊に怯えながら、恋人の幽霊と過ごすという悍ましい生活になる。
しかもケース3の事件まで解決し、赤い服の女の正体まで掴めたと思うのだが、また現れる。
感染するかのようにフェリーで赤い服の女を見たものが呪われ殺人を犯してしまうという規則性。
本当はケース1の事件より以前にケース0が自身が恋人を殺していたという展開は、流石だ。

・容赦のないラスト
赤い服の幽霊の居場所を突き止めて許されるのは吉岡のみ、自分が死んだことを認識した赤い服の女は無差別に殺害していくようになるラストは素晴らしいかった。
特に相棒刑事のキルは、覗き込んだ水に引きずり込むのかと思わせておいて、フライングバルセロナアタックで上から襲撃は度肝を抜かれた。
冗談みたいなシーンだが、結構よくできててJホラーではなかなか殺意強めのシーンだったなと思う。
特に殺戮が繰り広げられている描写もないのに既に死人が多数出て、廃墟と化し始めているような描写も流石と言わざるを得ない。

・黒沢作品群
"キュア"を観ているからこそ、全くの別犯人が同じ手口で殺人を犯すということに焦点がいくが、本作は幽霊が物理的に触れられるし物に触れるという"回路"も内包されている。
しかも"回路"の時よりも昇華したホラー演出であり、まさか物理移動が法則を超えた痩身の女性であるという、それはそれで確かに怖い。
しかもそれらしいメイクもせずに目を見開かせて風にたなびいた黒髪で歩いて寄るかと思えば、無重力のように足を動かさずに移動してくる。
ドアを開けてフワッと飛び降りたかと思うと、赤いドレスだけが空を舞う表現は痺れた。
"ドッペルゲンガー"や"降霊"も借りれたので非常に他作品も本作に手法が取り込まれているか楽しみ。
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