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マチネー/土曜の午後はキッスで始まるのandesのレビュー・感想・評価

3.9
映画愛を表明する監督はあちこちにいるが、ジョー・ダンテの場合は“映画館愛”も溢れる作家だった。冒頭、胡散臭いヒッチコックもどき(というかウィリアム・キャッスルそのまま)を登場させて、ギミック映画の世界へ観客を招待する。
キューバ危機の最中、軍役で父不在の少年で映画好きな主人公。普通なら孤独なアウトサイダーになるところを、やや影がある(ここは引っ越しが多い諦めがあるのだろう)ものの普通の少年にしたのは良い。話に広がりがでるし、孤独を知ることが利発なイメージに繋がっている。
さてもう一人の主人公、興行師ウールジーも胡散臭いながら、夢を信じている男であり、“映画館自体がエンタメ”という信念が胸を打つ。劇中、直接描かれるようにギミック映画へのリスペクトはもちろんあるだろう。ただ、リアルタイムでギミックを知らない我々でも、映画館で映画を観れば、「電流が走る」し「爆風を感じる」のだ。サブスク視聴が一般化した今、映画観賞の原点に感動してしまった。
どちらかといえば小粒で、ややまとまりにかける(コミカルではある)ので、名作の類ではないかもしれないが、愛すべき小品だと思う。
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