シンタロー

砂の器のシンタローのレビュー・感想・評価

砂の器(1974年製作の映画)
3.6
野村芳太郎×松本清張によるサスペンス。国鉄蒲田操車場内で殺人事件が発生。被害者が身元不明で捜査は難航する中、前日駅近くのバーで、被害者がある男と会っていたことが判明。被害者は東北なまりのズーズー弁で話し、会話の中で"カメダ"という言葉が交わされていた。秋田県に"羽後亀田"の駅名があることに気づいた刑事・今西と吉村は秋田県を訪れるが…。
あまりにも有名な名作ですが、中身はほぼ最後の40分くらいに凝縮されてる感じ。序盤は丹波哲郎の捜査旅行みてるような感覚でかなり緩め。だいぶカットできたでしょ、と思ってしまいました。謎解きの面では、方言の解釈や戸籍偽造など、おもしろい所もあるんだけど、最後まで解せなかったのは犯行の動機。被害者があまりにも好人物なので、いくら過去を消し去りたいにしても、殺す必要あったか?
素晴らしいのは、芥川也寸志、菅野光亮による音楽。当時の邦画としては最高峰ではないかと思ってます。クライマックスのピアノ協奏曲"宿命"には震えました。あとは、わかっていても泣けてくるのが少年時代の回想シーン。理不尽な差別にあいながら、お遍路姿で放浪、自炊して父親を看病、駅で離れ離れに…「音楽の中でしか父親に会えないんだ」は悲し過ぎです。
飄々とした演技の丹波哲郎は安定だけど、森田健作は芝居がヘタ過ぎて、一人浮いてる感じ。島田陽子の使い方も勿体ないなぁ。素晴らしいのは加藤剛。欧米の二枚目俳優に負けず劣らずのルックスで、暗い闇を抱えている感じ、芸術家肌の神経質な感じ、美しく表現されてたと思います。出演時間は短いながら加藤嘉、緒形拳の芝居も見事でした。
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