うりた

砂の器のうりたのレビュー・感想・評価

砂の器(1974年製作の映画)
3.9
前半の推理パート。
丹波哲郎演じる今西刑事が日本全国を渡り歩き、自分の足で稼いでいく。
だんだんと点と点が線で繋がっていく快感。丹波哲郎の脂がのった凛々しい演技も良い。
ただ、これが傑作???という気持ちが拭えなかった。途中までは。

この映画はすごいと気付いたのは後半の回想シーン。
登場人物が音楽家であるという設定をここまで演出に活かせるものなのか。
セリフひとつない回想シーンを激しい“ 宿命”が追い立てる。
警察の会議中、思わず涙溢れてしまう今西の解説にこちらも胸を打たれる。

当人の幸せは他人が決められるものではない。
しかし、他人が人の幸せを願う気持ちもまた間違いではない。
父と子の宿命は永遠に続くし、自分が犯した罪の宿命も永遠と続く。
芸術家をここまでつき動かした原動力は、心に抱えた過去の闇と光であるという皮肉。
最後の最後にハンセン病差別に対するメッセージが込められていることに気付き、ハッとした。
うりた

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