よつ

砂の器のよつのネタバレレビュー・内容・結末

砂の器(1974年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

邦画史上屈指の名作とうたわれる割には、かなり穴や矛盾が多いストーリーだった。

例えば、電車から紙吹雪を撒いていた女のくだり。彼女が記者に素性を聞かれて正直に答えるわけがない。重要な証拠を隠滅している最中なのだから、黙秘するなり偽名を使うなりして身分を隠すだろう。なぜ勤め先や源氏名までご丁寧に明かす?本当はバレたいのか?
理詰めで犯人に近づくのではなく、根性と僥倖頼りの展開に萎えた。

和賀英良が三木謙一を殺害するシーンを詳しく描いてほしかったけど、余白を残すラストシーンだった。
美しい伴奏のなかで、耐え難い迫害からの逃避行は続く。とても見応えのある映像だった。

和賀が三木を殺害した理由は、口封じだけが目的ではない気がした。
実父の千代吉は、和賀の写真を見たときに、明らかに我が子だと認識しながらも「知らねぇ」と涙ながらに言った。親子は互いのために断腸の思いで、二度と会わない決心をしたのだろう。
その覚悟を無下にするような三木のおせっかいは最早暴力に近いものであり、和賀は親子の絆に割って入られたことに怒りを覚えたのではないか。
その怒りと、自らの正体が露見する焦りが相まって犯行に至ったものと推察する。
三木は育ての親として和賀を我が子同然に想っていたが、和賀にとっては千代吉だけが親なのだ。その行き違いがとても悲しい。

丹波哲郎と加藤剛がめちゃくちゃ格好良かった。若い刑事役の森田健作は後の千葉県知事なのか~。
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