イトウモ

今宵かぎりは…のイトウモのレビュー・感想・評価

今宵かぎりは…(1972年製作の映画)
4.0
ゾンビの宴会芸

年に1回たった一夜だけ、召使いが貴族と立場を交換するという触れ込みで、貴族の宴会芸を、貴族のコスプレをした召使いたちが楽しむというだけの映画。だけというか、「楽しい宴会」という振付だけが残った寸劇、歌謡、舞踊と舞踏会があって白塗りの仮装者たちがまったく楽しくなさそう。

なにがなんだかわからないが、ただ単にコンセプチュアルに楽しいかどうかもわからず型だけを模倣する「消費社会」批判に終始するわけでもなく。
中身はくだらない、手法は凝っているという美しい映画になる。
これが美しいというのは、伝えるような中身はなく演技が演技そのものに徹するときの表面でしかないことの切実さ、技術への純粋さであって、嘘であるとわかっていて嘘であっても楽しいではなく、嘘であるから嘘の技術が楽しいという表現の贅沢さにある。
とはいえよくわからないので、もう一回見たい
S=Hとは少し異なりながら、台詞のリズムの徹底。光の虚構性。儀式めいた同じ構図の繰り返し。
複製品なのだから貴族が名刺使いに、召使いが貴族に入れ替わるあのショットは同じショットをもう一度貼り付けただけでも構わないだろうに、そうではなく記録された演劇のようにきちんともう一度上演されたのだと思いたい
こういうのが4Kとかになるとどうなのだろうと思う