囁きのwhisper

今宵かぎりは…の囁きのwhisperのレビュー・感想・評価

今宵かぎりは…(1972年製作の映画)
3.9
【渋谷TSUTAYA VHS回収】
パッケージからただならぬオーラを感じた、ダニエル・シュミットの初監督作。
年に一夜だけの、召使と主人の立場が入れ替わる日を描いているらしい。

まず、OPが凄まじい。
おそらくその立場逆転が行われるであろう屋敷のロングショットで、そこから少しずつ屋敷に近づいていく中で、タイトルクレジット等が表示されていく。
たったこれだけなのだが、屋敷を囲む空がまるで異界を捉えたかのうように霊的な青に包まれている。美しすぎて恐ろしい。

肝心の本編なのだが、立場逆転が行われているのかも正直よく分からない。というのも、召使たちも「今日ははしゃぐぜ〜!」みたいなノリでは全くなく、微動だにせず横並びで着席し、ただ皿が並ぶのを待ち続けているような異様な光景が続く。

全体的にシュミットの撮る顔はとにかく恐ろしく、全く理解できないのに異界に引きずり込まれてしまう力がある。
初監督作とは思えない作品でありながら、確かに初監督作じゃないと出せない尖り方だなという感覚もある。

にしても、これがシュミットの始まりだと思うと、遺作の「ベレジーナ」はずいぶん丸くなったというか、エンタメに寄っていったんだな〜という新たな発見。
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