うにたべたい

怪獣王ゴジラのうにたべたいのレビュー・感想・評価

怪獣王ゴジラ(1956年製作の映画)
3.8
一番最初の国外ゴジラ作品。
モンスターバースシリーズやエメリッヒ版よりもずっと以前、1956年に全米公開された"ゴジラ"で、全米だけに留まらず世界各国で上映され、"ゴジラ"の名を世界に広めるきっかけとなった作品です。

内容は初代'54ゴジラを再編集したものとなっています。
大きくは変わっておらず、尾形や恵美子、芹沢博士、ゴジラを保護したいというポジションの山根博士等も原作通り登場します。
アメリカ向けに映像の追加が行われていて、主役が白人に変更されているのが大きな変更点です。

カイロに移動中の白人記者「スティーブン・マーティン」が、立ち寄った東京でゴジラに遭遇し、その経験を回想するという形式で語られる展開です。
スティーブはストーリーテラー的な位置づけで、オキシジェン・デストロイヤーの開発や、その他のゴジラ殲滅の作戦には参加しません。
スティーブの見ていない部分 (芹沢博士が恵美子にだけ秘密の薬品実験を伝えるシーンなど) についても、元のゴジラ同様流れます。
そのため、初代ゴジラを繰り返し観るならば、あえて海外版で観てみるというのはありかもしれないです。

なお、海外版は政治的なメッセージについてはカットされていて、ゴジラが水爆実験の結果目覚めた旨の説明はあったものの、さらっと流されていて、反核といったテーマ性は薄れています。
ラストも、「世界は救われた。壊れた街は復興するだろう」的なメッセージでしめられました。
作品自体のテーマや深みが薄れていることと、白人が主役で本来の主役が後ろに下げられているため、私的には元の作品の方が良作と思いました。
ただ、再編集とはいえ元の作品をほぼそのまま使っているので、本作でも充分楽しめました。
送電線塔を破壊するシーンは何度見ても素晴らしい特撮ですね。

メッセージ性が薄れているところについては、ゴジラファンから"台無し"との声が聞こえてきそうですが、ともあれ大まかな展開に変更は加えられておらず、良再編集だと思いました。
まあ個人的にはメッセージ性とかあまり気にせず、怪獣映画は怪獣が暴れれば正義だと思っているので、本作も楽しく見ることができましたが、こだわる方はダメと思うかもしれないです。