るる

ものすごくうるさくて、ありえないほど近いのるるのレビュー・感想・評価

3.5
傷ついた少年の心に、ここまで寄り添った映画もそうないと思う。

余計な演出はできない、お涙頂戴の救いの描写なんて陳腐にしかならない、ただただ誠実に、痛みと向き合うしかない、そうしなければならないほどに、あれは大きな事件だった。

少年の葛藤が繊細に描写されている。必要のないところで自分を責めてしまう、他の誰に許されたとしても自分自身が自分を許せない…傷つきやすい、特に、まだまだ世界が狭い、子供らしい心の動きを、上手く描いていると思う。

最後の種明かしには少々心がついていかなかったのだが、優しい母親や、緩やかな繋がりの存在が浮かび上がったことにより、少年は少しずつ外に歩き出していける、そう思いたい。

余談だが、SNSを題材にした『ステイ・コネクテッド』という映画の中で、「9.11をキッカケに携帯電話やSNSを積極的に利用するようになった」という言及があり、なるほどと思うと同時に、あれからもう長い年月がたったのだということを実感した。そして、記憶は風化するということを思い知った。

事件直後の、出来立ての傷がヒリヒリと痛む空気感が切り取られている良作です。一見の価値あり。
るる

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